年齢を問わず、もともと“おもしろい”人はいるものだ。逆に何かと悲観的で、笑いとは縁遠い人もいる。「シニアの生活にこそユーモアの力が発揮される」と言う『すごい葬式 笑いで死を乗り越える』(朝日新書)の近著がある高千穂大学人間科学部教授の小向敦子さんはこう語る。
「確かに性格の影響は大きいです。そんな意味で、ユーモアの感性が乏しい人は、特に高齢になってから“損しがちな人”ともいえます。ユーモアや笑いは人間に本来備わっているもの。トレーニングで鍛えて磨くこともできます。ユーモアを身につけることは、高齢者にとっては防災訓練でもあるのです」
まずは、人がおもしろいと思うこと、笑いを呼び起こす技術を聞いた。
「人は、予想した通りの流れから外れる、うれしい裏切りのような状況におかしみを感じます。本来の姿や普通が“ちょっとズレる”とおもしろい。たとえば猿などの動物が人間っぽいしぐさをすると、理屈抜きで笑えます。ものまねなどは好例ですね。
またパロディーも初心者が練習しやすいわかりやすさ。オリジナルがあり、そこから“ちょっと違う”“ちょっと似ている”のがおもしろい。替え歌や四文字熟語・ことわざのパロディーなどは人気があり、それらを集めた書籍などもたくさん出ています」
ちなみに『天下分け目の戦い→ヘンな分け目の戦い』というパロディーは、以前購入した日めくりカレンダーに書かれていたもの。受験で丸暗記した歴史用語と、薄毛のおじさんの切ない表情というギャップがおかしくて、時間を経ても笑ってしまう。
他にも、イラストにあるように目玉焼きがブタの顔になっていたり、オムライスにケチャップでハートが描かれていたりするのを見るだけでも、口角が上がる。日常の中にささやかな笑いをちりばめておくのも、ユーモアのスキルアップに役立つ。
重要なのはこういった世の中にある“笑いの種”を見つけること。ユーモアの感性を磨くことも重要だ。
「元来、まじめで優等生志向、ふざけるのが苦手な日本の高齢者には、コメディー映画や落語、漫才、手品、パントマイムを見たり、パロディー集やジョーク集を読んだり、受け身の笑いに親しむことから始めるのがよいでしょう。慣れてきて、おもしろいことを思いつき、発信したくなれば大成功です」
高齢者の日常にこそ“笑いの種”はたくさんある。まず家族が気づいて笑い、互いに笑い合える空気をつくってほしいと小向さんは言う。