2013年に施行された「マンション建て替え円滑化法(マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律)」では、全区分所有者の「5分の4」以上が同意すれば、建物を解体して土地を売却、区分所有状態を解消することができるという定めがある。
しかし、この野洲市のマンションの場合は全9戸である。「5分の4」は7.2戸となり、7戸だけの同意では足りない。あと1戸を加えた8戸の同意がなければ建て替え円滑化法が適用できないのだ。
さらに、2015年には「空家等対策特別措置法(空家等対策の推進に関する特別措置法)」が施行されている。これは周辺に何らかの被害を及ぼしそうな空き家に対して、行政が「助言・指導・勧告・命令」などを行ったうえで、なお是正が見られない場合は「特定空き家」に指定することができる。さらに、指定後は行政が強制的に解体できることを定めている。
この場合、解体の費用は後ほど所有者に請求することになっている。これまで一部自治体でこの法律を使って解体された空き家の事例も見られるが、所有者がその後に解体費用を負担したという話は聞かない。つまりは、行政の持ち出しで解体されているケースがほとんどだと思われる。
今回浮かび上がった滋賀県野洲市の全9戸のマンションも、解体費用は3000万円から4000万円と報道されている。地方都市にとっては右から左へ動かせる額ではない。
だが、今回の野洲市の件は決して他人事ではない。すべての分譲マンションの未来の姿を表しているのだ。