41年前の大ヒット曲、兄弟デュオ狩人の『あずさ2号』は、8時ちょうどに新宿始発の“特急あずさ”に乗って信濃路を帰る女性が主人公だ。しかし、2019年春のダイヤ改正により“あずさ”の停車駅が激減するため、歌われる情景からますます遠くなりそうだ。“あずさ”が走る沿線のなかでも長野県の危機感は特に強い。長野では停車本数が諏訪湖の最寄り駅である上諏訪では36から34、下諏訪が16から4、精密機械産業で知られる岡谷が32から28、中央本線と篠ノ井線が接続する塩尻が33から28、南アルプスへの玄関口にもなる富士見は11から4へと減少する。ライターの小川裕夫氏が、ダイヤ改正によって揺れるが、一枚岩ではない長野県の事情についてレポートする。
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3月16日、JRグループがダイヤを改正する。
今回のダイヤ改正では、所要時間が数分間短縮される。中央線を走る全特急列車が最新のE353系に置き換えられるためなのだが、通常、鉄道マニアを除けばダイヤ改正に興味を示す人は多くない。
しかし、今春のダイヤ改正では、山梨県や長野県の関係者からの注目が高まっている。その理由が、特急列車の停車駅問題だ。
今春のダイヤ改正で、JR東日本は中央線を走る特急”あずさ”の停車駅を整理する。整理とは言いつつも、平たく言えば停車駅の削減だ。
中央線の特急には、主に“かいじ”と“あずさ”の2種類があった。ダイヤ改正では、中央線から青梅線へと乗り入れる特急“おうめ”や大月駅から富士急行線に乗り入れる特急“富士回遊”などが新登場する。
それとともに、東京都内の四ツ谷駅や三鷹駅は、停車する特急がゼロになる。中央線で容易にアクセスができるので、四ツ谷駅や三鷹駅は特急が停車しなくても不便はないのだろう。実際、四ツ谷駅や三鷹駅所在する新宿区や三鷹市からの反応はない。
一方、停車駅が大幅に削減される山梨県や長野県は、反発を強めている。山梨県内は、塩山駅・山梨市駅・石和温泉駅の3駅で特急あずさがまったく停車しなくなる。長野県内は下諏訪駅・富士見駅・塩尻駅・岡谷駅・上諏訪駅で特急あずさの停車本数が大幅に削減される。
「今回のダイヤ改正は、まったく寝耳に水でした」と困惑するのは、長野県地域振興部交通政策課の担当者だ。
特急の停車数がゼロもしくは大幅に削減されれば、観光にも影響を与えかねない。移住促進に取り組む自治体にとっても、マイナス要因だろう。地元経済が大打撃を受けることは間違いない。
JR東日本が、特急停車駅を削減するダイヤを長野県に通知してきたのは昨年の12月半ば。それまで、事前に相談はなかった。結論ありきのJR東日本の姿勢は、当然ながら沿線の自治体から不満が噴出した。