ビジネス

リニア新幹線 静岡県とJR東海が直面する「大井川水源問題」

山梨県で試運転中の中央リニア新幹線

 江戸時代には東海道でも屈指の難所と呼ばれ、箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬと言われた大井川。その大井川が原因で、中央リニア新幹線プロジェクトが困難に直面している。トンネル掘削によって大量に噴出する大井川水源の水を、どのように処理するのかという問題だ。ライターの小川裕夫氏が、大井川を挟んで静岡県とJR東海が直面している問題についてレポートする。

 * * *
 JR東海が2027年開業を目標に工事を進める中央リニア新幹線。約9兆円も投じる一大プロジェクトは、JR東海にとって社運を賭けたと形容しても過言ではない。その一大プロジェクトに暗雲が立ち込めはじめた。

 先の山梨県知事選で当選した長崎幸太郎新知事が、甲府に建設が予定されているリニア駅の周辺整備計画を白紙撤回することを示唆しているからだ。また、長野県でも阿部守一知事がリニア建設によって排出される残土処理で、環境に配慮することを要請。

 早期の開業を目指していたJR東海にとって、クリアしなければならない課題が増え、そのために開業年がさらに遅れる可能性も否定できない。

 とはいえ、山梨県や長野県はリニア開業で恩恵を受ける。だから、リニアの早期建設・開業を望む声も根強い。

 問題は、リニアが通るだけで駅が設置されない静岡県だ。

 東京と名古屋を約40分で結ぶ中央リニアは、路線の大半が山の中を走る。そのため、中央アルプス・南アルプスにトンネルを貫くための大工事をしなければならない。単純に山を掘削するだけでも大変な作業だが、南アルプスの地下には大井川の水脈がある。この水を巡って、静岡県とJR東海が対立しているのだ。

 トンネル工事では、事前から大量の水が湧き出ることが予測されていた。その湧き水の扱いを巡って、静岡県側は「湧き水の全量すべて戻す」ことを主張。一方、JR東海は「減量分を戻す」と主張した。

 静岡県とJR東海の意見対立は、平行線をたどった。そのため、静岡県の川勝平太知事はリニアのトンネル掘削工事を許可しなかった。

「だからと言って、静岡県がリニア建設を反対しているというわけではありません。行政は暮らす人たちを守るのが務めです。リニアの掘削工事をするなら、きちんと地元自治体の言い分を聞き、地元住民の生活が脅かされないようにしてほしいとお願いをしているのです」と説明するのは、静岡県くらし・環境部環境局水利用課の担当者だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

石川県の被災地で「沈金」をご体験された佳子さま(2025年4月、石川県・輪島市。撮影/JMPA)
《インナーの胸元にはフリルで”甘さ”も》佳子さま、色味を抑えたシックなパンツスーツで石川県の被災地で「沈金」をご体験 
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン
隣の新入生とお話しされる場面も(時事通信フォト)
《悠仁さま入学の直前》筑波大学長が日本とブラジルの友好増進を図る宮中晩餐会に招待されていた 「秋篠宮夫妻との会話はあったのか?」の問いに大学側が否定した事情
週刊ポスト
新調した桜色のスーツをお召しになる雅子さま(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
雅子さま、万博開会式に桜色のスーツでご出席 硫黄島日帰り訪問直後の超過密日程でもにこやかな表情、お召し物はこの日に合わせて新調 
女性セブン
NHKの牛田茉友アナウンサー(HPより)
千葉選挙区に続き…NHKから女性記者・アナ流出で上層部困惑 『日曜討論』牛田茉友アナが国民民主から参院選出馬の情報、“首都決戦”の隠し玉に
NEWSポストセブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
週刊ポスト