今年に入り、囲碁界がおおいに湧いている──。“天才囲碁少女”の小学生が相次いでプロ棋士になったからだ。なぜ棋士の低年齢化が進んでいるのか。囲碁ライターの内藤由起子氏がその背景をレポートする。
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新年早々、囲碁界で9歳の天才少女・仲邑菫さんがプロ入りするニュースが駆け巡ったのを覚えておられる方も多いだろう。その興奮冷めやらぬ状況の中、続いてまたもや小学生のプロ試験合格者が誕生した。上野梨紗さん12歳、小学6年生だ。
仲邑さんは世界で戦える才能を認められ、新設された「英才特別枠」採用で、ライバルとの対局などは打たずにプロ入りを決めた。かたや上野さんは従来からある「女流棋士採用試験」で合格。総当たりリーグ戦で予選10局、本戦8局を打ち、堂々と1位となってプロ入りを決めた。
小学生でプロ入りを決めたのはこれで6人となった。仲邑さん、上野さん以外の4人は、井山裕太五冠や趙治勲名誉名人ら、みな歴史に名を残す活躍をしている。年少でプロになるということは、それからの伸びしろが大きい証でもあり、仲邑さん、上野さんの今後の活躍がなんとも楽しみだ。
ところで、小学生でプロ入りを果たしたのはたった6人しかいないのに、なぜ今年は2人も続いたのだろうか。
その背景を辿ると、2002年度から始まった「ゆとり教育」が批判され、2011年ころから「脱・ゆとり教育」が提唱され始めた時期がターニングポイントとなった。多くの子育て・教育雑誌などで、子どもの成長によい影響を与える習い事として、こぞって囲碁が紹介されたことが大きい。
また、子どもに特化した囲碁教室や囲碁サロンが多く誕生していた背景もあった。2000年から「新宿こども囲碁教室」を始めた棋士の藤沢一就八段は、こう振り返る。