春休みの風物詩として、子供からお年寄りまで幅広い層から支持される『映画ドラえもん』シリーズ。3月1日公開の『映画ドラえもん のび太の月面探査記』の脚本を執筆したのは、直木賞作家の辻村深月さん(38才)だ。ドラえもん映画の持つ最大の魅力である「時空間を超える」設定を最大に生かし、冒険の舞台を月の世界に。月に住む子供・エスパルのルナ役を演じた広瀬アリス(24才)と今作について語った。
物心ついたときからドラえもんが大好きだったという辻村さん。広瀬もまた幼い頃から、ドラえもんが身近にあり、テレビアニメも毎週楽しみに見ていたという。そんなふたりは、どんなひみつ道具に憧れていたのだろうか。
広瀬:ひみつ道具にも夢中になって、ずっとほしいなと思っていたのは誰もが夢見る〈とうめいマント〉。子供の頃は親に早く寝なさいと叱られるたびに、“あぁ、とうめいマントがあれば、このままリビングでテレビを見ていられるのに”とか、考えていましたね(笑い)。あと〈どこでもドア〉も絶対にほしい。ぎりぎりまで寝ていたい、地方へすぐ行きたい、ワンちゃんをすぐ連れていきたいと思います。本当にあったらいいのになぁ。
辻村:私は〈ホンワカキャップ〉。体質的にお酒が苦手なのですが、みんながすごく楽しそうに飲むのがうらやましくて。ホンワカキャップがあると、ジュースでもお酒と同じテンションになれるんです。のび太が飲みすぎて酔っぱらう場面がとても面白くて、今でも憧れの道具です。
広瀬:今回、あらためてドラえもんを見たら、幼い頃には気づかなかったような見方ができて、ウルッときたんです。もちろん昔も楽しかったけれど、こうして10年、20年経ってからあの頃と同じ作品を見るとまた違う。
辻村:そうなんですよね。ドラえもん映画は大人になって見返すと、深い所まで理解できて、“二度出会える”存在だと思うんです。藤子・F・不二雄先生がもともと当時の最新の学説や現実に則った知識に基づいて描かれてきたものなので、子供に本物の情報を与えているんですよね。今回の脚本を作る上でも、そこは絶対に守らないといけないという意識が強くありました。
今回の舞台にした月は遠くて近い存在で、行くには大変だけど観測が随分進んでいる。生き物が住める環境ではないとわかっているので、「月へ行ってみたら、そこには広大な文明がありました」という脚本は成立しないんです。