思ったような結果が出なかった馬が、出走間隔を開けた後に出てきたとき、厩舎によるコメントや予想紙などで「立て直した」などと表現していることがある。この言葉は具体的にはどういう意味なのか。『週刊ポスト』での角居勝彦調教師による連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」より、お届けする。
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中距離で勝てなかった馬が、次走では距離を変えて臨む。これを「距離を見直して立て直す」と表現しますね。
「立て直し」には、目先を変えての出直し、再チャレンジなどの一般的な意味が含まれていて、聞いたほうではなにやら分かったような気持ちになります。しかし競馬の「立て直し」には明確な意図があります。
たとえば1800mで勝てなかった馬を1400mで走らせる。もちろん勝つことに越したことはありませんが、目的は勝利ではない。頑張ることを覚えさせるための立て直しです。単に長い距離が合わないからということではありません。中距離で勝てないのは、行きたがる掛かりグセが直らず、道中でタメを作れないから。距離を短くすることで一本調子の競馬でもなんとか形になる。
馬に「タメはうまく作れないけど、ダメじゃないんだ」と思わせたいんですね。
角居厩舎の4歳セン馬のドラセナがその典型です。2017年10月のデビュー戦(京都・芝1800m)ではコンマ1秒差の2着。悪くはありませんが、どうも掛かるところが気になった。調教も芳しくなく、折り合いがつかない悪弊がレースでも見えたんですね。
そこで立て直し、距離短縮です。1600mでも折り合い面で不安だったので、11月の次走に1400mを走らせた。1番人気に推されたもののC.デムーロの手綱で5着。「なにやってるんだ」とお叱りを受けそうな結果ですが、陣営としては気落ちしなかった。結果を出すための立て直しではない。立て直すのは、その後の調教です。