3月1日公開の『映画ドラえもん のび太の月面探査記』で脚本を執筆したのは、直木賞作家の辻村深月さん(38才)だ。ドラえもん映画の持つ最大の魅力である「時空間を超える」設定を最大に生かし、冒険の舞台を月の世界に。月に住む子供・エスパルのルナ役を演じた広瀬アリス(24才)と今作の魅力について語った
月面探査機のカメラが捉えた白い影が話題を集め、のび太は月のウサギだと主張するがクラスで笑われてしまう。そこでひみつ道具〈異説クラブメンバーズバッジ〉で月の裏側にウサギ王国を作ることに。そんな中、ミステリアスな少年・ルカが転校してきて、のび太たちとウサギ王国へ行くと、エスパルという不思議な力を持つ子供たちと出会う──。
今作のテーマは定説を覆すこと。例えば今では地動説が定説として知られているが、〈異説クラブメンバーズバッジ〉を用い、異説である天動説をマイクに唱えることで、バッジをつけた者には天動説の世界が目の前に現れる。
劇中、のび太が《月にはウサギがいるって大人たちだって言っていたのに、いついないことになったんだよ》と言うように、作品は大人になって見えなくなった世界を再び私たちに気づかせてくれる。
辻村:もし〈異説クラブメンバーズバッジ〉があったら、「サンタクロースは本当にいる!」と唱えたい。
広瀬:あっ、私もまったく同じことを考えていました!
辻村:小3くらいまでは信じていたんです。でも、『サンタクロースってほんとにいるの?』(福音館書店)という絵本を図書館で借りて読んでいたら、母親から「いるって書いてあった? いないって書いてあった?」と聞かれて、そう聞かれるということはいないのかなって気づいてしまって。さらに、「妹には黙っておきなさいね」と言われて、より決定的になりました(笑い)。
広瀬:私は小5くらいまででしたね。母親に「今年は(プレゼントを買ってくる)時間ないな」と言われて、「えぇぇ~!?」と、衝撃が(笑い)。
辻村:これが現実になったらいいのにという意味では、RPGの世界で『ファイナルファンタジー』や『ドラゴンクエスト』のゲームの中に入りたいと思っていました。でも小説を書くことで、そこに入れるわけではないけれど、半分その願いが叶うような感覚があるから、それで小説を書き始めたのかもしれない。
広瀬:私も、お芝居を通じてちょっと疑似体験ができている気がします。ドラマでは時々すれちがいが多すぎて見ていてもやもや、イライラすることがありますけど、それを出る側としてやっている感覚がありますね。台本を読んでいると、自分が横入りして「本当はね」と真相を教えてあげたくなっちゃいます。
──幼い頃から大の読書好きという辻村さんと同様に、広瀬も読書好き、マンガ好きとして知られる。自宅には壁一面の本棚にマンガ本がびっしりと並び、地方ロケに60冊以上マンガ本を持ち込むこともあるのだとか。