トランプ大統領との米朝首脳会談の開催地となったベトナムに、特別列車で乗り込んだ北朝鮮の最高指導者・金正恩。謎だらけの通称「1号列車」の秘密に迫る。
飛行機なら数時間のフライトで済むところ、70時間にもわたって、金正恩を運び続けた特別列車。
「平壌出発時に14両編成だった列車は、中朝国境を越えたところで先頭の機関車が切り離され、中国国鉄の機関車(2両)と客車7両が加わって計22両になりました」
そう語るのは、『将軍様の鉄道』の著者で北朝鮮鉄道事情に詳しいトラベルライターの国分隼人氏。全長500m超の客車・貨車をけん引したディーゼル機関車は中国製の「東風11Z型」で(ベトナムでは「東風4D型」に代わった)、最高時速160kmを誇る中国国鉄の花形機関車だという(平常時は50~60kmで走行)。
「中国要人の移動に使われる最高性能の機関車で、運転は国内鉄道網を熟知した中国人クルーが担当していると思われます。あえてディーゼル車を使用するのは、電気に頼らず走行を続けられるからです」(国分氏)
ハノイまで車で170kmのベトナム・ドンダン駅に到着した時の映像などから、金正恩が乗車していたのは5両目(執務車)と考えられる。その前後の2~3両が応接車、会議車、寝台車などからなる金正恩の専用車両で、近くの車両には医師や看護師、女性秘書が待機しているという。そうした女性世話係の専用車両、シャワー付きの寝台車もある。金正恩専用のベンツ3台を搭載する車載車、電源車なども含まれる。
「車内は最高級の調度品が誂えられ豪華そのもの。父・金正日の時代から、大型液晶テレビやカラオケなどが完備されていました。近年は衛星電話や高速インターネットも導入され“走る執務室”としての実用性も向上しています」(同前)