1996年に『水曜どうでしょう』の放送が始まり人気を集め始めた当時、今のように動画サービスもなかったため、非放送地域だった東京在住者は録画を知人に送ってもらうなど、様々な工夫の末に番組を視聴していた。現在、ネットの動画配信サービスが充実してきたおかげで、ローカル放送番組であっても全国で楽しむことができる。ロケマスター芸人と呼ばれる千鳥が司会をつとめる関西ローカル番組『相席食堂』も、AmazonプライムやTVerなどで視聴できる。ローカル番組で発揮されている芸人・千鳥の真価について、イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が考えた。
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観光地を巡ったり、街を歩いたり、地元民と交流したり、その土地が持つ魅力を紹介するロケ番組。風光明媚と映像の相性は高く、不動のテレビのコンテンツとして人気を集めている。最近、そんなロケ番組に新たな要素が……。制作陣が考えたオリジナル要素を“ちょい足し”することが流行している。
ウルトラマンに登場したキャラクターの着ぐるみが観光する『ウルトラ怪獣散歩』、ドラゴンボールのモノマネ芸人が栃木の名所を紹介する『まろに☆え~るTV~とちぎの旅!』など。完成されたフォーマットにあえて異物を投入。マンネリを避けた「ポストロケ番組」とも例えられる番組が隆盛を迎えている。
増えつつある「ポストロケ番組」、なかでも個人的にヒットしたのが『相席食堂』だ。司会を務めるのは、大悟とノブからなるコンビ・千鳥である。
「今ごろ?」と思われる方も多いだろう。僕はこの番組を通して千鳥の面白さをやっと理解できた。第3シーズンから参加したコント番組『ピカルの定理』では分からなかった。過去『SMAP×SMAP』が放送されていた枠で昨年、放送されていた『世界の村のどエライさん』でも気づかなかった。しかし、『相席食堂』の千鳥には声を出して笑ってしまう、ハハハッと。
ハートウォーミングな番組名に騙されてはいけない。『相席食堂』は変態的な二面性を持つ番組。有名人が日本全国を訪ね、地元の人にいきなり相席をお願いする。「『鶴瓶の家族に乾杯』かっ!」と言いたくなるのが表面。そのロケVTRを千鳥がスタジオでモニタリング、これが裏面。ロケに不慣れなタレントがリポーター役を務めることも多く、“ロケマスター芸人”として鳴らした千鳥の常識では考えられない事態が頻繁に起きる。そのたびに2人は、目の前にある“待てぃボタン”を押す。「ちょっと待てい!!」の掛け声とともにVTRは一時停止、2人は勢いよくツッコミまくる。
取材するリポーターのクセの強さを千鳥が解説することによって生まれる笑い。ロケ番組なのにも関わらず、メインはスタジオトーク。『相席食堂』はロケ番組というフォーマットそのものをいじっている。ありそうでなかった切り口が鮮やかだ。