間もなく「平成」が終わり、新しい御世を迎える。メディアはそれをどう伝え、国民はどう捉えるのか。1989年、昭和から平成への変わり目をアナウンスした元NHKアナウンサー・松平定知氏がその瞬間を語る。
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昭和天皇は、崩御される前々年の9月22日に歴代天皇として初めて開腹手術を受けられました。そのことを受け、崩御の1年ほど前からだったでしょうか、いつか来る“その日”に備え、NHK局内に記者、プロデューサー、ディレクター、アナウンサー、キャスターなどからなるプロジェクトチームが結成されました。当時19時からの「NHKニュース」のメインキャスターを務めていた私もメンバーに入り、皇位継承や大喪の礼に関するものを中心に皇室用語を勉強したことを覚えています。
崩御前年の昭和63年9月19日に大量吐血されてからはいよいよ“臨戦態勢”に入り、私もつねにポケベルを持ち、居所を明らかにしておくよう求められました。
そして、昭和64年1月6日深夜、仕事を終えて帰宅し、就寝したところ、朝の4時頃、アナウンス室から電話がありました。「シャバカの動きが変だという連絡が入った」と言うんです。シャバカとは宮内庁管理部車馬課のことで、皇室の車の運転管理、馬の管理などを担当する部署のことです。陛下に重大な異変が起きているようで、急いで局に行きました。
その後の経緯はご記憶にある方も多いかと思いますが、7日午前6時33分に昭和天皇は崩御され、7時55分にそのことが宮内庁長官によって発表されました。NHKを始め各局とも通常番組を中止し、特別番組体制を組みました。