大相撲3月場所は、角界では“就職場所”と呼ばれる。中・高・大の卒業生が一斉に新弟子検査を受けるからだ。
「新弟子スカウトは親方衆にとって協会内の“権力闘争”の一環。横綱や大関に育てれば、自身の出世につながる」(ベテラン記者)
そんな獲得競争で、今年は「協会トップ」と「現役トップ」がぶつかり合った。まず、八角理事長(元横綱・北勝海)の下に入門する高校個人5冠の埼玉栄高3年・斎藤大輔だ。
「八角部屋所属で同じ埼玉栄出身の小結・北勝富士など、同校とのパイプをフル活用した。190cm、135kgの体躯に抜群の運動神経で、早ければ1年で関取、3年後には横綱を狙える。現在55歳の八角理事長にとって65歳の定年までの“長期政権”への強い追い風になる」(若手親方)
鼻息荒い八角理事長から“最強新弟子”の称号を奪わんとするのが横綱・白鵬だ。宮城野部屋には鳥取城北高3年・当真嗣斗が入門。
「沖縄生まれで、わんぱく相撲を小4から3連覇。小6では少年相撲の国際親善大会『白鵬杯』で優勝した。200kg超えの巨体で、鳥取城北高へ相撲留学。白鵬の内弟子には、同校相撲部総監督の息子の関取・石浦がおり、その先輩・後輩関係がモノを言った。入門会見では白鵬自ら鳥取へ出向き、“最強新弟子はこちら”という強烈な対抗意識を見せた」(担当記者)
八角理事長は、白鵬が望む“モンゴル国籍のまま一代年寄襲名”を認めようとしない。引退後の道筋が見えない白鵬だが、次世代ホープを囲い込み、八角理事長の野望に立ち塞がろうとしている。
※週刊ポスト2019年3月15日号