2020年の東京五輪でゴールドスポンサーとなっているスポーツ用品大手のアシックス。売り上げの8割以上を占めるのが各種スポーツシューズだが、ナイキやアディタスといった世界の列強と比べると、いまいちブランド力に劣る。業績も堅調とは言い難い同社の経営陣は、今後どんな巻き返し策を考えているのか。経済ジャーナリストの河野圭祐氏がレポートする。
* * *
アシックスの2018年12月期決算は、純損益で203億円の赤字となった。同期の売り上げは3866億円だったから、売り上げに比して赤字額はかなり大きい。実際、過去最大の赤字幅だという。海外の直営店舗を含む国内外の保有資産を整理、再評価し、230億円の損失を計上した点と、米国での売り上げ大幅減が効いたようだ。
昨年3月末、三菱商事から転じてアシックス社長に就任した廣田康人氏は、いきなり試練に直面した形だが、言い換えれば、前社長時代に先送りしてきた課題を、前期に一気に吐き出したともいえる。
今秋はラグビーワールドカップ、来夏は東京オリンピック・パラリンピックが控えており、アシックスは五輪ではゴールドスポンサー(推定で150億円の拠出)にもなっているだけに、前期でリセットし終えて、反転攻勢の態勢を早く整えたいとの思いもあっただろう。
そして、反撃の狼煙ともいえる商品が、去る2月28日から発売された、新ランニングシューズの「METARIDE」。前日の27日に行った発表会で廣田社長はこう語っていた。
「この『METARIDE』という革新的なシューズを紹介できるこの日を、心待ちにしていました。これまで当社が培った技術が集積されており、ランナーが、より長い距離を、よりラクに、楽しく走ることを可能にするシューズです。
私も試し履きをし、従来のシューズとはまったく異なった感覚に捉われました。長距離も走ってみました。とても推進力があり、前へ前へと連れていってくれます。まさに走るためのシューズだと実感しました。
このシューズは、長距離ランニングの世界に大きな革新をもたらすでしょう。世界中のランナーにこのシューズの価値を実感していただきたい。この秋以降も、『METARIDE』と同じコンセプトを持った製品をシリーズ展開していきます。このシューズはゴールではありません。革新的なシューズではありますが、あくまで1つのマイルストーン(通過点)なのです」