臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々を心理的に分析する。今回は、交渉が決裂した第2回米朝首脳会談を分析。
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ベトナムの首都ハノイで、2月27日から2日間行われた第2回米朝首脳会談は、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が望んだ「良い結果」にはならなかった。北朝鮮の非核化を巡る交渉が焦点だったが、合意に達することができず会談は決裂。金委員長は憮然とした表情で会談が行われたホテルを後にした。
トランプ米大統領はというと、「北朝鮮との合意に前のめりで、安易に妥協するのではないか」という大方の予想を裏切った形だ。帰国後、ボルトン米大統領補佐官が、「『完全な非核化』というビッグディール(取引)を成立させたかったのだ」と話したように、当初合意を「失敗」と報じたものの、「安易に合意せずに国益を守った」と論調を変えるメディアもあるようだ。
会談の決裂は、当初の想定とは違う効果も生むことになる。「ツァイガルニク効果」だ。これは、人は何かを達成したり、やり終えた事は忘れてしまうが、達成できず中途半端に終わったことはよく覚えているという現象のこと。途中で止めてしまうと、人は続きが気になるものなのだ。「決裂」という中途半端な状態に終わった会談では、その予兆が所々で顔をのぞかせていたように思う。
今回、金委員長は専用列車でベトナム入り。到着したドンダン駅からハノイまでは歓迎ムード一色。北朝鮮と国交があり、古くから友好関係があるベトナムでの歓迎ぶりは、前回、米朝首脳会談が行われたシンガポールとはずいぶん違う。
だからなのか、会見場に入ってきた両首脳の位置は前回とは逆。向って右から金委員長が、左からトランプ大統領が入ってきた。首脳会談といえば、通常はホスト国の首脳が向って右側になる。ベトナム開催では、ホスト側が北朝鮮なのだろうか?立ち位置の違いだが、主導権に対する印象は違ってくるものだ。
まずは、関係が良好であると印象づけようとしたような握手だった。余裕があるような表情を浮かべた金委員長と、ゆっくりと手の平を上に向けて歩み寄るトランプ大統領。握手を交わした両首脳は、そのまま写真撮影に応じたのだが、金委員長の表情が貼りついたようにぎこちなく変わっていった。よく見ると、握手していた金委員長の指先の色が白く変わっていた。おそらくトランプ大統領が、優位性を示そうと力を込めてギュッと強く握り、金委員長もその手を握り返そうとしたのだろう。