国内

2936人の所在不明児 「生きたまま保護」は幸運なこと

安否不明の子供たちは2936にも及ぶ

 貧困、育児放棄、DV──罪のない子供たちの不幸が相次いでいる。政府は1人でも多くの子供を救うために実態調査に乗り出したが、「調査の限界」にぶつかった。「誰も知らない」「誰にも知られていない」ゆえに、安否すらわからない。そんな子供たちが今、日本中にいる。

『万引き家族』(2018年公開)でカンヌ国際映画祭のパルムドールを獲得した是枝裕和監督の代表作『誰も知らない』(2004年公開)。主演を務めた14才の柳楽優弥が、日本人初かつ史上最年少でカンヌの最優秀主演男優賞を獲得し、世界を席巻した問題作だ。

 柳楽演じる明と3人の妹弟は、母親と暮らす母子家庭だ。子供はそれぞれ父親が違い、出生届さえ出されておらず、小学校に通ったことがない。いつも狭いアパートの中で、息を殺して生活している。

 娘が「学校に行きたい」と言えば、母親は「学校なんて行ってもおもしろくないよ」と取り合わない。

 あるとき、母親が恋人をつくって家に帰ってこなくなった。4人の子供は、誰も知らない生活を始める。生活費は底をつき、電気、ガス、水道も止められる。万引きと公園の水で一日一日を生き延びる。

 ネグレクト(育児放棄)、貧困、屈託のない笑顔、言い様のない不条理──『誰も知らない』は、実際にあった「巣鴨子供置き去り」という保護責任者遺棄事件に着想を得た作品だった。“世界で最も経済的に豊かな国の1つ”とされる日本において、そんな事件が実際にあったのだ。

《安全確認できぬ子2936人》(朝日新聞)
《安否未確認の子2936人》(読売新聞)

 そんな記事が3月1日朝刊で一斉に報じられた。厚労省によると、乳幼児健診を受けていない0~3才児や、幼稚園や保育園に通っていない3~5才児、小中学校に来ていない児童生徒など18才未満の子供を調べると「1万5270人」いた。

 その中で、自治体職員が家庭訪問をし、食事を充分に与えられているか、あざはないかなどを目視し、「143人」を虐待の疑いで児童相談所の支援対象にしたという。

「その調査は、昨年3月、東京・目黒区で発生した船戸結愛ちゃん(当時5才)の虐待死事件をきっかけにした緊急対策の1つでした。結愛ちゃんは香川県の児相で一時保護されましたが、転居先の東京都で幼稚園に通っていませんでした」(全国紙社会部記者)

 結愛ちゃんのような子を1人でも多く救いたい──そんな調査の中で、もう1つの重大な問題が浮上する。首都圏で調査にかかわった職員が話す。

「家庭訪問で安全の確認をするのは、出生届が出されていて、その自治体に住民票がある子供が対象です。住んでいるはずなのに、地域の幼稚園にも保育園にもいないので、自宅を訪ねてみる。

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン