「毒にも薬にもなる」という言葉がある。病気やつらい症状を治してくれる「薬」でも、効き目が強いがゆえに、服用の量や仕方を間違えたり、個人の体質と合わなかったりすることで、逆に体調を悪化させる「毒」にもなる。薬に精通する医師たちは、どんな薬に注意しているのだろうか。
◆ロキソニンをのんで「黒い便」が出たら要注意
頭痛や生理痛などの時につい頼りたくなるのが、痛み止め。代表的な薬である「ロキソニン」には否定的な声が複数あがった。新潟大学名誉教授の岡田正彦医師はこう話す。
「主成分の『ロキソプロフェン』は鎮痛効果がある半面、胃が荒れやすいので、病院では胃薬を一緒に処方します。市販品は胃を荒らさない工夫がされているというが心配は残る。自分ではのみません」(岡田さん)
健康増進クリニック院長の水上治さんも胃粘膜のダメージを心配する。
「『ロキソニン』をのんで黒い便が出たら、胃から出血している疑いが。すぐに医師に相談してほしい」
◆H2ブロッカー胃腸薬で食中毒になるリスクも
胃を守り、消化を助けてくれる胃薬も、ものによってはかえって胃を弱めてしまう。水上さんは「H2ブロッカー胃腸薬」をあげる。
「ちょっとした胃痛や消化不良の時、胃酸を抑える『H2 ブロッカー』を配合した胃薬をのむのは、避けた方がいい。胃酸が減ることによって消化力が落ちるうえ、殺菌力も弱まる。その結果、食中毒を起こすリスクさえある。胃潰瘍になってしまったならともかく、少し胃が悪くなったからといってのむ薬ではありません」
女性の強い味方であるはずの便秘薬も、選び方次第ではかえって悪化の原因になる。東邦大学医療センター大橋病院・婦人科の高橋怜奈医師はこう話す。
「私は『刺激性の便秘薬』は第一選択としては服用しません。大腸を刺激し、腸のぜん動運動を促すため即効性はありますが、その一方で依存しやすくなってしまう。慢性的に服用すると腸の自然な動きがなくなってしまい、最終的には、薬なしでは便はおろかガスも出なくなる。この状態になってしまうと治療はかなり難しいでしょう」
下痢止めも「基本的にはのまない」と回答する医師がいた。渋谷セントラルクリニック院長の河村優子さんが言う。
「ノロウイルスやO-157だった場合、薬で下痢を止めると、ウイルスがいつまで経っても体外に出ていかない。これらの病気が原因ではなかったとしても、極力、食事内容を見直したり、漢方薬を使ったりして治療します」
※女性セブン2019年3月21日号