藤田菜七子騎手のGI初騎乗に沸いた競馬界。競馬マスコミばかりか、朝日新聞の天声人語まで取り上げるなど、近年では珍しい社会現象級の盛り上がりを見せたともいえる。そんなフェブラリーステークスの余韻も冷めやらぬ中、菜七子狂騒曲のきっかけを作ったDr.コパこと小林祥晃氏にインタビューを敢行。菜七子騎手への信頼感から、「ダート1200までなら日本一」という愛馬・コパノキッキングの素顔までを語り尽くした。(取材・文/麻野篤)
──フェブラリーステークスは残念ながら5着でした。
コパ「いや、もう頼んだ通りの騎乗でしたし、オーナーとしては満点ですよ」
──もし違うジョッキー、たとえば外国人騎手に乗せていたら違った結果だったかも、と考えることはありませんか?
コパ「う~ん、もちろん欲目で見たらあるのかもと思いますが、将来を見たらね。そろそろキッキングの主戦を誰にするか考えなくてはならない時期でしょう? すでに去年の夏には武豊か藤田菜七子という選択をしていたんですよ。ただ、(武豊のお手馬の)インティが思いのほか強くって(笑)。それは武豊はインティにいくだろうと(実際、インティがフェブラリーステークスを優勝)。
とはいえ、インティは短いとこは出てこないだろうから、キッキングが1200とか1400とかに特化してくれば、先々では武豊が空いてくる可能性もありますよね。そうなると、武豊が乗ったキッキングが見て見たいよね、ともなりますよね(笑)。どんなキッキングになるのか、それはいちファンの目線としてもね」
小林氏の口からは、しばしば「ファン目線」という言葉が出てくる。それこそが氏の馬主としての哲学であり、学生時代に競馬ファンだったそのままの感覚だと明言する。今回、菜七子騎手に騎乗を依頼をした理由にも、その考え方が色濃く出ていた。
コパ「やっぱりファン目線は意識しますよ。当たり前だけど、馬にはファンがついている。あの個性的なキッキングに菜七子が乗っているのを見てみたい、というのが僕のいちファンとしての発想。まずはそこがありますよね。そうしたら、実はそう考えていた人がたくさんいたということなんですね。あれだけの人が集まった理由はそこなんじゃないかと思います」
──結果として、久しぶりに競馬界が盛り上がりました。
コパ「当たり前だけど、競馬ファンとしては、競馬が衰退するより栄えた方がいいでしょう? いま、競馬はなかなかスポーツ新聞の一面に載りませんよ。ところが、今回は何度も菜七子中心に取り上げてくれました。今も多くの女性誌からも取材が来ているほど。あのコンビで盛り上がったのは、オーナーとしても本当によかったですよね」
──そもそもなぜ武豊か藤田菜七子なのでしょう。
コパ「キッキングは乗り難しいところがあったのですが、それをカバーする柔らかい騎乗で走ったらどうなのかな、と思って。キッキングに関しては、武豊か菜七子だろう、と僕は思ったわけです」
──あたりが柔らかい。
コパ「もう折り紙付きでしょう。女性独特の関節の柔らかさとかもあると思うしね」