間もなく新しい御世を迎える。メディアはそれをどう伝え、国民はどう捉えるのか。1989年1月、昭和から平成への変わり目をテレビでアナウンスした元NHKアナウンサー・松平定知氏がその瞬間を語る。
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私は平成元年となった1989年11月9日にベルリンの壁崩壊によってブランデンブルク門が無血開放される瞬間も、20世紀が終わって21世紀が始まる瞬間も、テレビの生放送でそのことを伝えました。たまたまの巡り合わせだったのですが、そういう歴史的な瞬間に立ち合えたことはアナウンサー冥利に尽きます。
もう一つ申し上げますと、平成最初の紅白歌合戦の総合司会も担当させていただきました。ともに昭和を代表する大スターだった石原裕次郎さんは昭和62年7月17日に、美空ひばりさんは平成元年6月24日に亡くなっています。これも時代が変わったことの象徴ですね。
間もなくやってくる御代替わりは、先代天皇の崩御ではなく、江戸時代の光格天皇から仁孝天皇への譲位以来およそ200年振りとなる生前退位によるものです。その意味で、昭和から平成のときのような悲痛な思いは国民の間に起こらないのではないでしょうか。もっとも強い思いは「天皇陛下、お疲れ様でした」という労いの感情だと思います。昨年の12月20日、天皇として最後となる誕生日に際しての記者会見で、「天皇としての旅を終えようとしている」「支え続けてくれた多くの国民に衷心より感謝する」と述べられたとき、涙声になられていました。あれを聞いた国民の多くは、陛下はもう十分お役目を果たされたと思ったことでしょう。