春は、いろいろなスポーツの開幕シーズンだ。野球でもサッカーでも、チームごとにファンやサポーターがいて、その熱狂的な応援が試合を盛り上げる。だが、応援が高じて、トラブルを起こすこともある。そもそもファンやサポーターは、どうして熱中するのか。ニッセイ基礎研究所上席研究員の篠原拓也氏が、心理学の事例をまじえながら解説する。
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人は集団をつくって生きる存在だ。誰も1人だけで生きていくことはできない。集団をつくり、その中で情報を交わしたり、助け合ったりすることで、いろいろなことができるようになる。みんなで協力しあうことは、社会生活をしていくうえでプラスとなることが多い。
しかし、時には集団に加わることが弊害となる場合もある。ここで、心理学で有名な「内集団・外集団バイアス」を紹介しよう。
イギリスの社会心理学者ヘンリー・タジフェルは、人の集団について、ある実験を行った。
まず、まったく見ず知らずの人を何人も集める。そして、コインを投げて、表か裏かで、この人たちを2つの集団A、Bに分ける。ただし、各集団に分けられた当人たちには、コイン投げでランダムに分けたことは伝えないでおく。そのかわりに、集団Aのメンバーに対して、「この集団の方々は、独特の芸術を好んでおられます」と伝える。さて、なにが起こっただろうか。