首相官邸と向かい合って建つ内閣府本庁舎の地下1階に「関係者以外 立ち入り禁止」の張り紙が出された部屋がある。看板もない。官邸と地下通路で結ばれたこの部屋は「皇室典範改正準備室」で、天皇生前退位の皇室典範特例法が2年前に成立してからは、事実上、新元号選考作業の“秘密司令部”となっている。
部屋の“主”は古谷一之・官房副長官補。官僚トップの杉田和博・官房副長官を支える3人の官房副長官補の筆頭格(内政担当)で、事務次官級のポストだ。
4月1日に予定されている新元号発表に向けて取材にしのぎを削る各紙の政治部記者から最もマークされている人物でもある。
「古谷さんは財務省出身で国税庁長官から現職に転じ、すでに6年目になる。各省庁の官房長をメンバーとする『新元号への円滑な移行に向けた関係省庁連絡会議』議長を務め、新元号選びの実務を一手に担っているキーマン。政府は平成が始まった頃から、著名な学者に非公式に新元号案の考案を依頼し、これまでに集められた多くの新元号案が古谷さんのもとで厳重に管理されているのは間違いない」(政治部記者の1人)
現在、官邸に提出されている新元号の候補案の数は、「100以上」(読売)、「数十程度の中から、すでに十数個に絞り込んでいる」(NHK)、「非公式に提出を受けた20程度の案から絞り込む作業に入った」(朝日)と報道によって大きな差があるが、原案選定の責任者である菅義偉・官房長官の下で実務を担当する古谷氏の部屋では、新元号案の絞り込み作業が大詰めの段階とみられている。政治部ベテラン記者の話。