春場所で大関取りに挑んでいる関脇・貴景勝。幕内で2番目に低い身長175cmと力士としては小柄ながら、徹底した突き押し相撲を貫くそのスタイルには、勢いに乗れば止められなくなる“強さ”と、得意の形に持ち込めなかった時の意外な“脆さ”が同居する。因縁のある難敵揃いで、昇進ラインは『3場所34勝』、つまり大阪場所で10勝を最低でも達成することとみられており、相当ハードルが高い。
強い逆風は土俵外でも吹き荒れている。
貴景勝が所属する千賀ノ浦部屋は、貴乃花部屋に所属していた力士たちが移籍してきてから初めての大阪場所となった。スペースなどの問題もあり、先代(常盤山親方)と懇意だった宿舎から出て、今年は東大阪市内にある学生相手のマンションを宿舎にしている。
「場所前の稽古は宿舎から車で20分ほど離れた大阪市生野区にある勝山高校相撲部の土俵を借りていた。稽古場には部屋の幟も立てられず、高校の敷地内のため後援者の見学もない。宿舎マンションの敷地内にプレハブを建ててちゃんこ場にし、場所が始まってからはその横に簡易土俵を作って調整している。正直、十分な稽古ができる環境とはいえません」(後援会関係者)
協会執行部と元・貴乃花親方の確執が、思わぬかたちで貴景勝の調整に暗い影を落としているのだ。加えて元・貴乃花部屋の力士たちが「糸の切れた凧」になっているとの声もある。