約200年ぶりとなる天皇譲位に伴う改元をめぐって思惑は入り乱れている。元号選定は国家的事業だが、原案選定の責任者である菅義偉官房長官に比べて、安倍晋三首相の影は薄い。そのため、元号発表の記者会見を安倍首相自身が行なうという見方もある。だが、その意中は、これまでとは違う決め方で元号の歴史に“レガシー”を刻むことを模索しているようだ。
〈これまでの元号はすべて中国の古典から選ばれているが、安倍首相は周辺に対し、「元号の出典は日本で書かれた書物がいい」と話しているということで、今回は、室町時代までに漢文で書かれた日本の古典に由来する案も候補にあがっているという〉
元号懇のメンバーでもある大久保好男氏が社長を務める日本テレビの3月1日の“スクープ”だ。
では、日本の古典から選ぶ場合、これまでと違った元号案が出てくるのか。中国思想史が専門の堀池信夫・筑波大学名誉教授に聞いた。
「今回、国書由来の元号を検討するのであれば、古事記やそれに次ぐ六国史と呼ばれる日本書紀、続日本紀、日本後紀、続日本後紀、日本文徳天皇実録、日本三大実録の歴史書を典拠にするのが妥当ではないかと思われます」
日本国語国学研究所代表の丸山顕徳・花園学園大学名誉教授は「訓読み元号」の可能性を指摘する。
「神判による勝訴を表わす『慶』(よろこび)は非常にいい漢字です。訓読みであれば、経済的な豊かさを示す『賀』(のり、よし、より、か)、自分の子供の代に継ぐまでの30年間の意味から、幾世代も続くという意味になった『世』(よ)などを元号に使うとめでたい言葉になります」