ドラマに必ずと言っていいほど登場するのが飲食店でのシーンだ。その店がドラマで欠かせない場所となることもある。北川景子主演の連続ドラマ『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ系)に登場するバーもすっかりお馴染みに。ドラマにおける飲食店の役割について、コラムニストのペリー荻野さんが綴る。
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飲食店を制する者がドラマを制する。これは私が勝手に言っている原則だが、『家売るオンナの逆襲』を見ていると、飲食店シーンの重要さがよくわかる。このドラマに出てくる飲食店といえば、ファンにはおなじみの「BARちちんぷいぷい」だ。
赤・緑・青・黄色の原色しましま模様など70年代風ファッションのこころ(臼田あさ美)が営む「ちちんぷいぷい」は、BARとはいうが、ミラーボールきらきら、昼も営業中で定番はべちゃっとした焼きそば。雰囲気は街のスナックだ。ここは、ここは、主人公の三軒家万智(北川)の勤め先「テーコー不動産」の上司で彼女の夫でもある屋代(仲村トオル)をはじめ、チーフの足立(千葉雄大)、部下の庭野(工藤阿須加)らも入り浸る「心のオアシス」である。
無表情のまま「私に売れない家は、ありません!!」も「GO!!」と決めセリフを言い放つ三軒家とは対照的に、こころは、悩むテーコー男子たちに「気が優しいのよ」「変わろうとしてるのね、庭野ちゃん」などとほっとする言葉をかける。よく見ると、毎回手書きの「こころごはん」が変わっており、それは「筑前煮」「砂ぎも炒め」「豚の角煮」「おでん」など、胃袋つかみ系の心憎い路線なのだ。男たちは仕事や家庭の愚痴を言っては、「こころちゃん、アレやって」と頼み、マドラーで「ちちんぷいぷい」とおまじないをしてもらって、立ち直る(?)のである。
また、この店は「事件の現場」にもなる。屋代は、このカウンター席でスーパーの店長(真飛聖)に熱い視線を送られてクラクラ。あわや浮気!?という騒動に。こころは、事件の目撃者であり、観察者となる。「ちちんぷいぷい」は、まさにドラマの中枢といってもいい。(今シーズンは、この店を舞台にしたTikTokのオリジナルCMも放送されている)
思えば、『相棒』シリーズの「花の里」、まもなく「2」がスタートする『ひよっこ』の洋食店「すずふり亭」、「まんぷく」の喫茶店「パーラー白薔薇」、そして毎年スペシャルが続く長寿シリーズ「渡る世間は鬼ばかり」のラーメン店「幸楽」や和食「おかくら」など、名ドラマには名物飲食店がつきもの。