音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、NHK大河ドラマの落語指導を担当する古今亭菊之丞の、自然体の高座の魅力についてお届けする。
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今年のNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』を手掛ける宮藤官九郎は2005年のTBS系ドラマ『タイガー&ドラゴン』で落語ブームの火付け役となった脚本家。今回の大河ではビートたけし演じる古今亭志ん生を狂言廻しとして登場させた(同時進行で森山未來が若き日の志ん生を演じている)。
『いだてん』で落語指導を担当しているのは、志ん生の孫弟子に当たる古今亭菊之丞。若い頃から艶やかな芸風が寄席通に人気で、2003年に異例の単独真打昇進を果たしている。今回の大河とコラボするように今年1月14日から5日連続の「大古今亭まつり~志ん生のDNAを受け継ぐ者たち~」を企画したのも彼だ。
その菊之丞が年に一度、大ネタ3席を披露する会を池袋演芸場で行なっている。題して「菊之丞完全独演会」。2013年に始まった企画で、第7回の今年は1月30日に開かれた。
開演すると前座もなくいきなり菊之丞が登場、まずは『茶の湯』を。ご隠居が風流に目覚めて定吉相手にデタラメ茶の湯に興じる前半、三軒長屋の住人が巻き込まれる中盤、利休饅頭を振る舞う終盤と、丁寧に演じて聴き手を引き込む。無理に爆笑を狙わず、要所要所でクスッと笑わせる自然体の高座が心地好い。