4月上旬に発表される第23回手塚治虫文化賞マンガ大賞。ノミネートされている作品のひとつ『ダルちゃん』(はるな檸檬・作、全2巻)は、周囲から浮かないような「普通の人」になりたいと努力する主人公の姿を「擬態」と表現して話題になっている作品だ。昨年12月の発売以来、30代女性を中心に共感の輪が広がっている同作。その作者・はるな氏と、昨年同賞短編賞を受賞した『大家さんと僕』(新潮社)の作者であり、お笑い芸人のカラテカ・矢部太郎氏との対談が実現した。「普通」とは何か、また自分の内面に向き合う難しさについて、語り合った。
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はるな:私は初めて矢部さんをテレビ番組『電波少年』(日本テレビ系)で拝見したとき、この人すごくモテるだろうなと思ってたんです。あの頃の見た目もあり、きっとモテる人だって。
矢部:あの頃の、なんですね(笑い)。
はるな:文学青年の香りというか、知的で文系女子にモテそうな見た目だと思っていたから、お笑いのボケとしてワーッといじられている姿を見てギャップに戸惑ってしまって……。だから『大家さんと僕』に純文学の風を感じて、ああやっぱり思った通りの人だったと勝手に嬉しくなりました(笑い)。
矢部:あはは、そうだったんですか。お笑いは『ダルちゃん』でいうところの「擬態」かもしれないですね。
はるな:ダルちゃんが毎朝メイクをしてストッキングを履き、スマホで占いをチェックして、社内では噂話でみんなと盛り上がる「ハケンOL・マルヤマナルミ」に擬態するように、こっちの人はツッコミ、こっちの人はボケという感じで、多くの視聴者や観客へ向けてわかりやすく記号化できるキャラが芸人さんには大事ですよね。