1995年には3234あった区市町村の数は、平成の大合併により2019年2月時点で1741になった。その平成の大合併のモデルケースとなった兵庫県篠山市が、平成の終わりと共に丹波篠山市へ名称変更する。なぜいま、名称変更をするのか、篠山市にあるJR福知山線篠山口駅の名称はどうなるのか。ライターの小川裕夫氏がレポートする。
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1995年に施行された合併特例法をきっかけに、全国各地の市町村は合併に取り組むことになった。当時、政府・総務省(旧自治省)が旗振り役を務めた市町村合併は、“平成の市町村合併”と呼ばれる。猛威を奮った平成の市町村合併は、それまで約3000あった市町村を約1700にまで減少させた。
合併特例法が施行された当初、市町村の反応は鈍かった。過去、基礎的自治体は明治の大合併・昭和の大合併という2度の合併期を経験してきた。平成の市町村は、人口減少を見据えた行政効率化や財源に悩む政府が地方交付税を削減する趣が色濃かった。そのため、市町村側からは「上からの押し付け合併」「大義なき、市町村合併」といった批判が噴出していた。
合併議論が盛り上がらない中、合併のトップランナーとして全国の話題をさらったのが兵庫県篠山市だ。篠山市は、1999年に篠山町・今田町・丹南町・西紀町の多紀郡4町が合併して誕生。新市名は、江戸時代から城下町としてにぎわい、全国的にも観光地としても知られる篠山を採用した。篠山は映画化したことでも有名になった芸者・阿部定が遊女として勤めていた遊郭があることでも有名だ。こうした知名度・歴史性などを勘案し、4町は新市名に篠山を選択した。
全国に先駆けて市町村合併を実現した篠山市は、合併の優等生ともてはやされるようになり、全国から視察が相次ぐ。そして、合併から20年が経過。篠山市という新市名が馴染み始めた矢先、篠山市は昨年になって“丹波篠山市”へ改称することを決定する。
「丹波篠山市への改称は、ブランド化した篠山市の特産品などを守るためにも必要でした」と説明するのは、篠山市創造都市課の担当者だ。
篠山市が市名を改称するのは、確固たる理由がある。篠山市が発足した5年後、隣接した氷上郡柏原町・氷上町・青垣町・春日町・山南町・市島町の6町が合併。新たに“丹波市”として市制を施行した。これが、騒動に火を点けた。