「口腔がんの原因は、歯に関係するものが非常に多い。特に舌がんは、誰にでも起こりうる。若い人も年配の人も可能性があります」
口腔がんのスペシャリストである、静岡がんセンター・鬼塚哲郎医師(頭頸部外科部長)は、2014年の勉強会で衝撃的な画像を提示した。
「患者は50代男性。舌の一部が白く変色して、浅い潰瘍になっていました。ここの痛みが1か月以上治らない。よく見ると、銀歯の尖った部分が舌に接触して病変ができていました。がんの可能性が高いので、検査と治療を兼ねて大きめに切除したところ、約1cmの早期舌がんでした」
鬼塚医師は、通常の口内炎は2週間程度で治るので、1か月以上同じ場所にある口内炎は注意が必要、と付け加えた。
銀歯の突起が常に当たることで、がんを引き起こすことは、あまり知られていない。そこで鬼塚医師に、詳しく尋ねてみた。
「慢性的な刺激が発がんに関与することは、教科書などに記載されています。突起があるような銀歯など、銀歯が何かしら関係したと思われる舌がんを、30症例以上診てきました。口腔粘膜の前がん病変がある方で、銀歯を外し、セラミックやコンポジット・レジンに変えると、症状が軽快したという患者さんもいらっしゃいます」