貴景勝の大関取りで盛り上がる大阪場所。東大寺のお水取り、甲子園のセンバツと並ぶ浪速に春を呼ぶ恒例行事だが、近年の地方場所における宿舎事情は時代とともに変わりつつあるようだ。
相撲は神事の側面もあるため、かつては寺社を宿舎にすることが多く、今も46部屋のうち17部屋が構えている。その一方で、寺社の老朽化に伴って郊外に稽古場を求める部屋が増えてきたが、今年からまさかの場所に構えたのが元横綱・稀勢の里の荒磯親方が所属する田子ノ浦部屋。兵庫・尼崎市の園田競馬場の勝馬投票券投票所に土俵を作ってしまった。
「田子ノ浦親方(元前頭・隆の鶴)と親交がある小牧太騎手からの紹介で、閑散期のこの時期に未使用の建物を提供しました。レース開催日はガラス越しに来場者も見学しますが、レースのない日は馬場をランニングしてもらっても大丈夫と伝えてあります」(園田競馬場関係者)
天井にオッズやレースを映すテレビモニター、壁に券売機がズラリと並び、朝稽古が始まると馬場側の窓に見学者がへばりつく。これまでの稽古場ではありえない光景だ。2階の喫茶室がちゃんこ場となり、若い衆の部屋からは馬場が一望できるという。
「競馬初体験の高安は大穴馬券で265万円を手にした。場所前の開催日には部屋の窓から“突っ込め~”と力士の声が飛び交っていた」(後援者のひとり)