生活習慣病の治療が始まる端緒となる、健康診断。定められた「基準値」が、健康か病気かを見極める境界となる。ところが、健康診断や人間ドックで“健康の判定基準”とされている数値の元になっている各学会の診療ガイドラインには、「年齢と性別」という重要なファクターが抜け落ちている。
長年、健康基準に関する研究を行なっている東海大学医学部名誉教授で『検査値と病気 間違いだらけの診断基準』著者の大櫛陽一氏が指摘する。
「米マサチューセッツ州フラミンガムの住民を追跡調査した研究では、5歳刻みで心筋梗塞など心疾患に対するリスクが異なることが明らかになりました。健診の基準は男女別、年齢別でなければ役に立たないのです。そもそも20歳の男性と、80歳の男性を同じ基準で判断できるわけがない」(以下、「」はすべて大櫛氏)
大櫛氏は2004年、日本総合健診医学会で、全国45か所の健診実施機関から約70万人分のデータを集めて解析した「男女別・年齢別健康基準値」を発表。大櫛氏はその後も調査を進め、神奈川など3県の約40万人の住民の健診結果とすべての疾患による死亡の関係を追跡調査し、基準内であれば死亡率が上がらないことを確認した。
大櫛氏が調査したデータの中から、「コレステロール」「中性脂肪」について見てみよう。医師から「悪玉(LDL)コレステロールの値が高い」と告げられれば、“血管が詰まって脳梗塞の原因になるのでは”などと不安に思いがちだ。