生活習慣病の治療が始まる端緒となる、健康診断。定められた「基準値」が、健康か病気かを見極める境界となる。ところが、健康診断や人間ドックで“健康の判定基準”とされている数値の元になっている各学会の診療ガイドラインには、「年齢と性別」という重要なファクターが抜け落ちている。
長年、健康基準に関する研究を行なっている東海大学医学部名誉教授で『検査値と病気 間違いだらけの診断基準』著者の大櫛陽一氏は2004年、日本総合健診医学会で、全国45か所の健診実施機関から約70万人分のデータを集めて解析した「男女別・年齢別健康基準値」を発表。大櫛氏はその後も調査を進め、神奈川など3県の約40万人の住民の健診結果とすべての疾患による死亡の関係を追跡調査し、基準内であれば死亡率が上がらないことを確認した。
大櫛氏が調査したデータの中から、「血糖値」について見てみよう。「血圧」や「コレステロール」では学会の基準よりも「大櫛基準」が健康とされる範囲が広かったが、血糖値は違う。
糖尿病の診断基準となる血糖値については、日本糖尿病学会の正常値(糖尿病の発症リスクが低い)が空腹時血糖で110mg/dl未満、HbA1c(ヘモグロビンA1c)で5.5%以下となっている。
HbA1cは赤血球中のヘモグロビンとブドウ糖の結合比率のこと。食事の影響を受けずに検出できるため、検査項目として有用性が高い。
「中高年に限って言えば、日本糖尿病学会の基準と私の調査した基準範囲や国際基準はほとんど変わりません。血糖値は高ければ高いほど、やはり糖尿病になるリスクは増加する」