詐欺の被害に遭うのはお金持ちだけ。そんな思い込みを裏切るような現実が広がっている。決して裕福とは言えない主婦層をターゲットに、薄く広く長く、真綿で首を絞めるような削り方をするのが新しい手法だ。SNS経由で誘われ、詐欺被害から抜け出せずにいる彼女たちについて、ライターの森鷹久氏がレポートする。
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「専業主婦だった嫁が、いきなり夢とかライフスタイルとかガラにもないことを言いだした。いや、それ自体は素晴らしいことなんですが、どうも様子がおかしい。子供を置いて夜に飲みにいく機会が多くなり、服装も変わった。不倫か、変な宗教にハマってはいないかと心配したのですが」
福岡県在住の会社員・山下聡さん(仮名・30代)は、結婚5年目。幼稚園に通う一人娘と家族三人、ささやかだが幸せに暮らしていたが、そんな日常に影が差したのは一年ほど前。妻がフェイスブックで知り合ったという知人に、多い時で週に三度も会いにいくようになってからのことだった。
「なんでも“ビジネス”を教えてくれる素晴らしい人に出会ったと。生き方を見直したい、輝きたいと、ぼんやりしたことばかり言い始めておかしいと思ったのです。通っていたセミナーをきっかけに妻は仕事を始めたのですが、それがなんと “ビューティーアドバイザー”と聞いて驚きました。化粧や服には無頓着でしたのでなぜ?と」(山下さん)
不思議な出来事ではあったが、妻が働いてくれれば生活も楽になる。そう思って見守っていたが、妻の月収は月に5万円に満たないほど。一方でセミナー代や会合費は月に10万を超える時もあり、知人の“ファッションアドバイザー”や“ライフスタイルコンサルタント”に支払う謝礼も月に5万円、大赤字だ。妻を問い詰めても「私の夢を応援して欲しい」と聞かず、家事もおざなりになった。子供は妻の実家に預けっぱなし、家庭の崩壊も予見された。