まもなく平成は終りを迎え、退位に伴って三種の神器をはじめ、宮中祭祀に使われる太刀や屏風などの品々が、現陛下から新天皇陛下に引き継がれる。昭和天皇崩御の時には約20億円の遺産があったが、退位の場合、財産はどのように継承されるのか。そもそも皇室にはどのくらいの財産があるのか。皇室ジャーナリストの神田秀一氏が解説する。
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現天皇が退位後、仮住まいされる高輪皇族邸は、昭和天皇の弟、故高松宮宣仁親王がお住まいだった高松宮邸だ。いまは国が所有するが、かつては高松宮の私有地だった。
終戦後のGHQ占領期に、皇室では11宮家が臣籍降下した。昭和天皇の兄弟である3宮家(秩父宮、高松宮、三笠宮)は残ったものの、お金に苦労した話が残っている。
例えば秩父宮雍仁親王の宮邸は屋根から雨漏りがひどく、来客の場合、応接間代わりに千代田区三番町の宮内庁分室を借りていた。また三笠宮崇仁親王も十分な資産がなく、東京大学に研究生として通学していた時、運転手に給料が支払えず辞められてしまい、電車通学を余儀なくされた。
しかし、高松宮宣仁親王は戦前から高輪皇族邸周辺一帯の広大な敷地を購入していた。戦後、GHQによって敷地の約半分にあたる1万1400平方メートルが没収され、国に物納している。残った9900平方メートルが私有地となった。
宣仁親王が1987年に亡くなった際には相続税が払えないため、8100平方メートルを国に寄贈している。残りは高松宮妃殿下の喜久子さまが相続したが、2004年12月に薨去。ご夫妻にはお子さんがいなかったので、喜久子さまの妹らが相続したが、相続税を支払うため土地を売却。現在はマンションが建っている。ちなみに私有地を含む遺産にかかった相続税は約7億9000万円だという。