「歯医者に行くのはお金がかかる」──そんなイメージを抱く人は多いだろう。ただ、それは「どのタイミング」で、「どの治療」を選ぶかで大きく変わる。
「痛くなったら行く」という考えだと、歯をどんどん失う悪循環に陥る。また、初診時の問診票の「保険診療か、自費診療か」の設問で、「自費」を選ぶと治療費が膨れあがるケースがある。もちろん、高額な治療が必要な状況はある。しかし、患者が「タイミング」「治療内容」の知識を身につけ、歯を守りながら費用を圧縮できる可能性があるのだ。
“歯を削って銀歯を詰める、被せる”という日本の歯科治療が、「抜歯ドミノ」を招いてきたことを本誌・週刊ポストでは追及してきた。
グラフをご覧いただきたい。40代で歯を失う本数は平均で1本以下であるのに対して、50代から加速度的に「抜歯ドミノ」が起きていることが分かる。歯が抜けるのは、決して老化現象ではない。予防歯科に取り組む歯科医・小池匠氏(58)はこう指摘する。
「私の世代は歯科大で虫歯にならない対策法を教えてもらった記憶がありません。日本の保険制度は、誰もが平等に歯科治療を受けられる素晴らしい制度ですが、“予防する”より“治す”に偏っているというところがある。治療するほど報酬が出る“出来高払い”なので、オーバー・トリートメント(過剰診療)になる可能性が極めて高いのです」
大半の人は歯の痛みや、歯肉からの出血など、自覚症状が起きてから歯科医院を受診する。したがって行なわれるのは、応急処置というべき治療だ。
一時的に症状は治まるが、虫歯や歯周病の根本的な原因を解決していないから、再発と治療を繰り返す。結果として、生涯の歯科治療費は驚くほど高くつくのだ。