3月15日夜11時過ぎ、ロームシアター京都の楽屋口。小雨が降る中、スタッフに囲まれ、杖をつきながら覚束ない足取りで出てくる小澤征爾氏(83)の姿があった。出迎えた10人ほどのファンから声を掛けられると笑顔で二言三言応じたが、公演を終えた後の憔悴ぶりは隠しようもない。
小澤氏はこの春、自ら塾長・音楽監督を務める「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト」の本公演オペラ「カルメン」に出演する予定だった。ところが、3月15、17日の京都公演を終えたところで体調を崩し、病院で精密検査を受けたところ「急性気管支炎」と診断された。医師から数日の入院が必要と告げられ、21日の神奈川公演、24日の東京公演を降板した。
冒頭の場面は、初日を終えて会場を後にする小澤氏の姿だ。翌16日のオフの後、17日の公演もやり遂げた小澤氏。移動日だった18日は、午前11時半過ぎに京都市内のホテルをチェックアウト。マネージャーらしき男性と2人で、京都駅に向かった。
京都駅では、数メートル歩いては折りたたみ椅子が付いた杖に腰かけ、休憩する小澤氏の姿が目撃されている。発車時間ぎりぎりまで新幹線の待合室の椅子に腰かけ、目を閉じて休んでいる姿は、遠目にも体調がすぐれない様子だったという。その後、小澤氏は東京方面の新幹線に乗車した。
東京公演の降板にあたり、小澤氏は以下のコメントを出している。
「若いオーケストラのみんなが、どんどん成長しながら、一流の演出家、歌手たち、合唱、先生たち、スタッフと一緒に素晴らしい舞台を創り上げていく姿を見ていて、僕も指揮がしたくて、したくてたまりませんが、今は大事をとることにしました。みなさんほんとうに申し訳ありません」
その後、症状は回復傾向にあり、千秋楽にあたる24日の東京公演では終演後のカーテンコールに登場。詰めかけたファンから万雷の拍手が送られた。1年後の2020年3月には、小澤征爾音楽塾設立20周年記念公演としてオペラ「こうもり」の上演が決定している。