スポーツ

明石商・狭間善徳監督が語る「公立校が勝ち続けられる理由」

明石商業の狭間善徳監督(写真:マスターズスポーツマネジメント)

 明徳義塾の馬淵史郎監督を師と仰ぐのが、2季連続で甲子園を勝ち取った公立の雄・明石商業の狭間善徳監督だ。明徳義塾中学では監督として4度の全国優勝実績を引き下げて、高校野球の指導者に返り咲くと、兵庫県内の勢力図を塗り替える戦いぶりで、一昨秋、昨春、昨夏の西兵庫大会、そして昨秋と史上初の4季連続県大会優勝、県内公式戦連勝記録を「27」に伸ばしている。高校大学球児向けフリーマガジン「サムライベースボール」の発行人である古内義明氏が、公立校として私学を圧倒する狭間マジックに迫った。

 * * *
 本州と四国をつなぐ明石海峡大橋を見ながら、山陽本線魚住駅で下りると、私学優勢の時代にあって、公立最後の砦と言われる明石商業がある。報徳学園、東洋大姫路、神戸国際大附属、育英など、全国有数の激戦区にあって、県内公式戦27連勝記録を続けているのは、明石市唯一の市立校として、「MEISHO」と呼ばれる明石商業だ。

──選抜出場おめでとうございます。2季連続甲子園となりましたが、夏の甲子園の経験が、今年のチームにも活きているのでしょうか。

狭間監督「秋の大会は初戦からプロ注目の投手との対戦でした。先制はされたものの、逆転して勝つことが出来ました。簡単には勝ち上がってきていません。試合内容として、しんどい試合の方が多かったです。先制されながらの試合が多く、決勝戦もサヨナラ押し出しですから、追いついて逆転して勝ち上がってきました。近畿大会でも逆転勝ちしたように、秋季大会からここまででしぶとい野球をしているとは思います」

──前評判の高い中森俊介は、どんなピッチャーですか?

狭間監督「中森は目指しているところが高いので、一つ一つに対しての取り組む姿勢が良い投手です。1年生で背番号1を与えても、天狗になること無く、自分が向上してチームのために貢献したいと思っています。勉強もオール5ですから、中学時代は様々な私学から誘われていたほどです。一方で、まだまだ体に力がなく、腹筋や背筋なども十分ではないながら、145キロを投げることができるので、まだまだ伸び代があると思っています。この冬でようやく腹筋300回、背筋200回、腕立て100回をクリアする事が出来ました。それなりの力が付いてきているとは思いますが、まだまだ体の力は足りないです」

──OBで、ドラフト1位で埼玉西武ライオンズに入団した松本航と比べると、どうですか?

狭間監督「航の身体は全てにおいて、柔軟性がありました。中森は特に肩周りが硬いです。当時、航にはスプリットを教えました。日本体育大学ではチェンジアップを習得できず、その代わりにツーシームがピッタリとハマりました。中森の勝負球はストレート。あのストレートがあるからこそ、沈む球も良くなってきて活かせるようになってきました」

──2枚看板の右サイドスローの宮口大輝は?

狭間監督「宮口は体に力があり、能力も高く、中森の良いライバルだと感じています。ただ練習でどこか楽をしようとするので、『この冬、頑張って練習すればヒーローになれるぞ!』と声掛けしてきました。1月初めにインフルエンザにかかり、体重も落ちたので、練習が出来ない時期が続きました。練習に戻ってきてからは意識を高く、練習しています。どこまで継続するか分からないですが、人間性は悪くなく、やんちゃでもないです」

──昨夏の甲子園でベンチ入りした5人が県大会全試合に先発出場。中でも、重宮涼主将や1番を打つ来田涼人の存在は心強いですね。

狭間監督「この10年間、100人を超える大所帯のチームになりました。兵庫県内でも関西学院、姫路工業、明石商業、報徳学園の順番で部員数が多いです。そのチームをまとめようと、重宮はチームで一番に声掛けができて、雰囲気をまとめようという意識があるキャプテンです。核弾頭の来田は、大阪桐蔭をはじめ、46校から勧誘が来たほどの逸材でした」

──強豪ひしめく兵庫県で、勝ち続けられる要因は何ですか?

狭間監督「その一つにデータ野球があります。県内の全ての大会、各球場にデータ班を派遣するので、対戦相手となる全てのデータを持っていて、私が分析をした上で戦っています。投手の癖と配球、捕手の動き、打者のタイミングなど全試合を見ます。練習後に、ビデオで2時間を見て、全員でポジショニングを中心に話し合います。一球一球、ポジショニングを変えるので、選手は一球毎に私の方を見ます。うちと試合をすると、こちらが、1、2本ヒットが多く、相手が、1、2本ヒットが少ない試合が多いです。目には見えませんが、細かいところでのデータ分析の差があるおかげで、このような結果になっています」

──その分析力が、近年の好結果に繋がっていると。

狭間監督「一昨秋、昨春、昨夏の西兵庫大会、そして昨秋と史上初の4季連続県大会優勝、9年連続となる夏の県大会ベスト8以上、県内27連勝も新記録です。6月30日に夏の予選の相手が決まり、10月の近畿大会が終わるまで、ずっと分析を続けているので気分が悪くなるほどです(笑)。

 基礎練習を徹底的にやった上で、どんな状況下でもスクイズ、盗塁、エンドランが出来る準備をして、作戦は状況に応じて決めます。なので、その作戦が実行出来る準備は怠りません。明石商業はスクイズが多いチームと言われますが、準備してきた中で一番勝ちに繋がりやすいプレーがスクイズであり、他にも攻撃のバリエーションはあります」

──この選抜でもデータは力を発揮しそうですか。

狭間監督「兵庫県内だけでなく、甲子園に行く時もほぼ全チーム持っている状況で行きます。今年も32校中20校以上のデータがあります」

関連記事

トピックス

広末涼子容疑者(時事通信フォト)と事故現場
広末涼子、「勾留が長引く」可能性 取り調べ中に興奮状態で「自傷ほのめかす発言があった」との情報も 捜査関係者は「釈放でリスクも」と懸念
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”川崎春花がついに「5週連続欠場」ツアーの広報担当「ブライトナー業務」の去就にも注目集まる「就任インタビュー撮影には不参加」
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
〈不倫騒動後の復帰主演映画の撮影中だった〉広末涼子が事故直前に撮影現場で浴びせていた「罵声」 関係者が証言
NEWSポストセブン
筑波大の入学式に臨まれる悠仁さま(時事通信フォト)
【筑波大入学の悠仁さま】通学ルートの高速道路下に「八潮市道路陥没」下水道管が通っていた 専門家の見解は
NEWSポストセブン
広末涼子容疑者(時事通信フォト)と事故現場
《事故前にも奇行》広末涼子容疑者、同乗した“自称マネージャー”が運転しなかった謎…奈良からおよそ約450キロの道のり「撮影の帰り道だった可能性」
NEWSポストセブン
長浜簡易裁判所。書記官はなぜ遺体を遺棄したのか
【冷凍女性死体遺棄】「怖い雰囲気で近寄りがたくて…」容疑者3人の“薄気味悪い共通点”と“生活感が残った民家”「奥さんはずっと見ていない気がする」【滋賀・大津市】
NEWSポストセブン
坂本勇人(左)を阿部慎之助監督は今後どう起用していくのか
《年俸5億円の代打要員・守備固めはいらない…》巨人・坂本勇人「不調の原因」はどこにあるのか 阿部監督に迫られる「坂本を使わない」の決断
週刊ポスト
女優の広末涼子容疑者(44)が現行犯逮捕された
「『キャー!!』って尋常じゃない声が断続的に続いて…」事故直前、サービスエリアに響いた謎の奇声 “不思議な行動”が次々と発覚、薬物検査も実施へ 【広末涼子逮捕】
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
再再婚が噂される鳥羽氏(右)
《芸能活動自粛の広末涼子》鳥羽周作シェフが水面下で進めていた「新たな生活」 1月に運営会社の代表取締役に復帰も…事故に無言つらぬく現在
NEWSポストセブン
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン