分譲マンションでは10数年に1度の割合で「大規模修繕工事」を行うケースが多い。街を歩いていると、足場を組んで外壁の修繕工事を行っているマンションを見かけることも多いはずだ。工事は区分所有者である住民がコツコツと溜めてきた多額の修繕積立金が使われるわけだが、「そもそも一様に大規模修繕は必要なのか」と疑問を呈するのは、住宅ジャーナリストの榊淳司氏だ。
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分譲マンションの大規模修繕工事は何をやっているかというと、主に外壁タイルの補修だ。外壁タイルは建物の主要躯体であるコンクリートの表面に、セメントと砂を水で練った接着用のモルタルで貼りつけられている。そのモルタルが劣化するとタイルが剥がれてくる。剥がれたタイルが落下して、地上にいる人間に当たると大けがをする可能性がある。
もしそうなった時に責任を負うのは、そのマンションの所有者だ。具体的には管理組合が損害賠償責任を負う。
外壁タイルが剥がれているのは、ある程度目視で分かる。いわゆる「タイルが浮いている」という状態になるのだ。そういう状態が複数か所見つかると「外壁の修繕工事が必要だ」ということになる。そのために足場が組まれるのだ。これには多大な費用がかかる。
まずは、そもそも論で考えたい。マンションの外壁にはなぜタイルを貼る必要があるのだろう。これは建築構造上必要なわけではなく、100%見栄えをよくするためである。そのほうが高級そうに見えるからだ。
世の中には外壁にタイルを貼っていないマンションもたくさんある。20階以上のタワーマンションの外壁にタイルが張られているケースは少ない。タイルっぽく見えるALCパネルを貼っている場合はたまにあるが、そもそも、マンションの外壁にはタイルを貼る必要はないのだ。
それに変わるものとして「吹付けタイル」というものもある。時間が経てば凝固する液体をコンクリートの壁に吹き付けるのだ。これで雨風が直接躯体コンクリートに吹き付けるのを防ぐ。一枚一枚タイルを貼ることに近い保護効果が得られるのである。
また、どうしてもタイルを貼りたいのなら性能の安定しないモルタルよりも、剥離の可能性が軽減される接着剤を使えばいい。多少費用はかかるが、モルタルよりも耐用年数は長い。その費用の差は、大規模修繕で足場を組む費用の数10分の1でしかない。