臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々を心理的に分析する。今回は、大相撲春場所で大関昇進を確定させた関脇・貴景勝を分析。
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平成最後で最小の大関が誕生する。関脇・貴景勝の大関昇進が、臨時理事会の満場一致で承認されたのだ。貴景勝といえば、元貴乃花親方の廃業に伴い千賀ノ浦部屋へ移籍。その直後、昨年11月の九州場所で13勝を挙げ、初優勝を飾った初々しい姿が記憶に残っている。
身長175cm、体重169kgという小柄ではあるが安定感のある体格は、民芸品の起き上がり小法師を連想させる。土俵で相手力士に突っ込んでいけば、その身長から、頭がちょうど大きな力士たちの胸に当たる。コロンとした体格は相手力士がまわしを取りづらいといわれ、体格を生かした突き押し相撲で白星を重ねてきた。どんな競技でも、小さな選手が大きな選手を倒すというのは、見ている者を魅了する。
大関になると宣言して迎えた今年の春場所、千秋楽での大関・栃ノ心との取組みは、大関昇進がかかった大事な一番だった。昇進の目安は直近3場所で33勝とされるが、ここまでの彼の勝ち星は33と微妙。取組み内容によっては昇進が見送られる可能性もある。その重圧と緊張は相当なものではないか、と思いきや、取組み寸前土俵際の貴景勝は落ち着いた表情だ。
運命の取組みは3秒で終わり。貴景勝が一気に栃ノ心を押し出した。勝った直後に大きく頬を膨らませ息を吐くが、その表情は変わらない。勝ち名乗りの声には何度も頷いていたが、千秋楽パーティでも表情が緩むことはなかった。一方、満面の笑みを浮かべていたのは師匠の千賀ノ浦親方だった。