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ライターの年収が2000万円だった時代に信念を貫いた人物

『この先には、何がある?』群ようこ・著

【書評】『この先には、何がある?』群ようこ・著/幻冬舎/1300円+税
【評者】坪内祐三(評論家)

 バブルというのは不思議な時代だった。当時私は『東京人』の編集者で、月手取り二十万円という薄給で休みも取らず仕事したけれど(結果的にそれが良かった)、仕事で出会ったライターたちは、自著を持たなくても、皆年収二千万円を超えていた。

 そのバブルの時代に大ブレイクしたのが橋本治と群ようこ(某文庫書き下ろしの初版が三十万部と聞いて驚いたことがある)だが、二人はブレイクしても「普通の人」をつらぬいたことでも共通している。群ようこの「普通の人」振りを回顧したのが『この先には、何がある?』だ。

 今ではむしろ知らない人の方が多いかもしれないが群ようこは『本の雑誌』にいた(その頃のことを殆ど書かないから関係悪化が退社理由かと思っていたけれど、「目黒考二さんにも椎名誠さんにも、本当によくしていただいた」とあるので安心した)。

 同誌に書いていた原稿が編集者の目に止まり、会社をやめるころには一年分の連載や書き下ろしの依頼もあったので、「この先、三年程度の収入は保証されていた」。あとはトントン拍子だった。

『小説新潮』に連載していた「鞄に本だけつめこんで」が本になる時(一九八七年)、連載担当の松家仁之が「今度、単行本を担当する、出版部の新入社員をご紹介します」といって「アイドルの小田茜にそっくり」な「細身のかわいらしい女性」を紹介してくれた。彼女の名前は中瀬ゆかりと言った。

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