音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より平成最後の武道館落語公演についてお届けする。
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2月25日、日本武道館で「らくごカフェ10周年記念 平成最後の武道館落語公演」と題する落語会が開かれた。出演はさだまさし、立川志の輔、立川談春、春風亭一之輔他。さだはらくごカフェ店主・青木伸広さんの高校落研の先輩で、志の輔と談春も青木さんが高校生の頃からの付き合い。彼らが出演してくれるというので「神保町に一番近い大きな会場」として武道館を押さえた、という冗談のような経緯がある。僕はさだまさしファンでもあるのでワクワクしながら武道館に足を運んだ。
8000人の観客を集めて午後4時開演。さだまさしが前説で登場し、青木さんが加わってのトークの後、「らくごカフェに火曜会」(二ツ目による定例二人会)の新旧レギュラーが交代で紙芝居や寄席の踊り、「本人の前でさだまさしを歌う」等の余興を披露した後、火曜会OBを代表して一之輔が高座を務めた。
一之輔は22年前の春風亭小朝による武道館公演を観ており、そのネタをマクラに振ってから、突き抜けたバカバカしさで爆笑させる『堀の内』へ。冒頭でオチを言っておいて「オチを間違えた」というオチにする素敵な展開だ。後半に「ジョン、ポール、ジョージ、リンゴ」と連呼するネタであるが故の、武道館リスペクトのセレクトかと思ったが、一之輔に訊くと談春のリクエストだとか。