3月25日、米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)が、有料の動画やゲーム、ニュース配信などのサービスを始めると発表した。だが、前年末の商戦でiPhone販売が減速すると「アップルショック」が起き、株価は約35%急落。その結果、「iPhoneは頭打ちになった」という悲観論や、「アップルショックは一過性のものに過ぎない」との楽観論など、様々な意見が飛び交い、騒がしい。そもそも、なぜジョブズなきアップルがここまで躍進できたのか──。近著に『アップル さらなる成長と死角』(ダイヤモンド社)があり、アップルでの勤務経験も持つ経営コンサルタントの竹内一正氏が解説する。
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現在のアップルは潤沢なキャッシュを持ち財務体質がバツグンの最優良企業だが、1997年にスティーブ・ジョブズが暫定 CEO になった時は、赤字で資金繰りに苦しみ、身売り話まで出る有り様だった。
そんなアップルを救ったのはiPodやiPhoneなどライフスタイルを変革した新製品だった──と、ここまでは誰でも知っている話だが、それだけでは説明が不十分だ。
iPhoneが華々しく成功するには“オペレーションの力”が欠かせなかった。オペレーションとは生産管理、在庫管理、物流からサプライヤーまで幅広く、縁の下の力持ちの仕事にして、マスコミの目が留まることはなかった。そして、アップルでオペレーションの仕事は“下流”とみなされていた。
ジョブズが指名した後継CEOのティム・クックはこのオペレーションの達人だった。
ティム・クックが来るまでのアップルには2つの顔があった。一つ目の顔は、イノベーションが上手いアップルだ。マスコミが報じ、世間が思っている顔である。そして、もう一つの顔は、世間の知らない顔だ。アップルは在庫管理が下手くそで、旧製品の在庫処分に困り損失を出してばかりの企業だった。