民放各局のアナウンサーが続々とフリー化する中で、自局のアナウンサーや出身アナを“再活用”する動きを見せているのがフジテレビだ。その狙いについてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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「最近やけにフジテレビのアナウンサーを見かけるな」と感じた人は多いのではないでしょうか。
3月25日から29日までの平日夕方5日間に渡って『グレイテストTVショー~ブラウン管が生んだスターたち』が生放送され、月曜から順に高島彩アナ&中野美奈子アナ、加藤綾子アナ&椿原慶子アナ、河野景子アナ&八木亜希子アナ、木佐彩子アナ&内田恭子アナ、小島奈津子アナ&西山喜久恵アナが日替わりMCを務めました。
さらに、25日に放送されたドラマ『大奥 最終章』には、宮澤智アナ、三上真奈アナ、新美有加アナ、久慈暁子アナが出演しましたし、29日の『今夜発表!4時間生放送・平成エンタメニュースの主役100人“ムチャ”なお願いしちゃいましたSP』にも歴代キャスターが全員集合。また、『めざましテレビ』や『ノンストップ』にもレギュラー以外のアナウンサーが多数出演しました。
これらは「フジテレビ開局60周年特別企画」によるものですが、アナウンサーの出演が多いのは単に「改編期だから」だけではありません。
2月にも、9日に『明石家さんまのFNS全国アナウンサー一斉点検』という41人のアナウンサーが出演する3時間特番が放送されたほか、クイズ番組の『ネプリーグ』にも11日に榎並大二郎アナと永尾亜子アナ、18日に牧原俊幸アナが出演するなど、出演数自体が増えているのです。
現在の主力アナから、河野アナや高島アナらレジェンドまで、露出の多さは1990~2000年代の女子アナブームを彷彿させるものがあります。アナウンサーの番組出演には、「タレント気取り」「アナウンス技術を磨け」などの厳しい声もある中、なぜこれほどフィーチャーしているのでしょうか?
◆受け身な立場のアナウンサーに活躍の場を
アナウンサーの番組出演が増えているのは複数の理由が考えられますが、なかでもキーマンは、アナウンス室長を務める立松嗣章さんの存在。立松さんは編成部長や広報部長としてさまざまな番組に関わってきた実力者だけに、これまでのような「制作サイドからの依頼に応えてアナウンサーを送り出す」だけでなく、「アナウンス室から制作サイドに働きかけて出演する」という形が増えているようなのです。
もともとアナウンサーは、表に出る華々しさがある反面、その立場は「使われる」という受け身なものになりがちで、自ら仕事の幅を広めるスキルアップが難しいところがありました。たとえば今春、テレビ朝日やTBSの人気アナウンサーたちが退職するように、「やりたい仕事がある」「キャリアアップを考える」と、そうせざるを得ない人も少なくありません。その意味で出演番組の幅が広がることは、アナウンサーにとってやりがいにつながるのでしょう。
また、制作サイドにとっても、アナウンサーは計算できる“準タレント”。一般人としての感覚がありながら、大物MCや実力派タレントとの共演で培ってきたトークやリアクションのスキルを持ち、活用すべき存在なのです。タレントに近い表現力や発信力がある上に、「タレントへの報酬を削減できる」という予算面でのメリットも見逃せません。
一方、視聴者の嗜好は「アナウンサーにまじめさや美しさより、親近感を求める」ように変わりました。実際、昨年12月発表の「好きな女性アナウンサーランキングTOP10」を見ると、1位の有働由美子アナ、2位の弘中綾香アナ、3位加藤綾子アナ、4位の川田裕美アナ、5位の徳島えりかアナ、さらに殿堂入りした水卜麻美アナなど、バラエティー出演が多く、親しみのある人が人気を集めています。「笑いのある番組に出演することが重要」ということでしょう。
◆現在もフジのアナはタレントの宝庫