ご退位まで、残すところ約1か月となった天皇陛下。すでにその日に向けて、連日、様々な儀式や行事を皇后美智子さまとともに務められているが、公務で目にする陛下のお姿は、いつもきっちりとしていて、スーツあるいは燕尾服という出で立ちが常。
国賓を招いての晩餐会などでは、国際儀礼(プロトコール)に則って燕尾服の上に、最高位の勲章“大勲位菊花章頸飾”(だいくんいきっかしょうけいしょく)と、“綬”(じゅ)と呼ばれるタスキのようなものを、斜めに身に着けることもある。
また皇室の伝統として継承されてきた祭祀では、平安時代から続く黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)という、天皇だけに許された装束に身を包む。
では、カメラやマスコミの取材がない時の、普段の生活では、どのような姿でリラックスされているのだろうか。そこで70年来の交流があるという陛下のご友人であり、『天皇陛下のプロポーズ』(小学館)の著書でもある織田和雄さん(83)に取材したところ、意外な情報を語ってくれた。
「陛下は皇太子時代から、いついかなる時でもネクタイを締めた洋風のスーツスタイルでした。しかし平成に入ってからのことでしたが、1回だけ、和服を着ていらっしゃったお姿を目撃したことがあります」
それは、織田さんが御所で開かれた食事会に招かれた時のこと。気の置けないご友人の方たちが集まるとあって、陛下は珍しく和服をお召しになり、リラックスされたご様子だったという。織田さんによれば、これまで何度も御所に伺って陛下にお会いしていたが、和服姿を見たのはこの時だけ。
「60年前、私は陛下と葉山御用邸に泊まって一緒にお風呂に入りましたが、その後も陛下はきちんとスーツをお召しになっていました。普通、湯上りはくつろいだ服装で過ごしたいものですが、将来天皇となるご自覚と強い意志は、当時から服装にも表れていました」と、織田さんは振り返る。