最高裁が2月、「離婚の慰謝料を不倫相手には請求できない」との初判断を示し、大きな話題になった。これはどういう意味なのか? 法的には不倫し放題でも問題ない、ということなのだろうか。弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
先日、興味深い判決が最高裁で下されました。それは妻の不倫が原因で離婚した場合、不倫相手に慰謝料を請求できるかが争われた裁判で、最高裁は「特段の事情がない限り、請求できない」との初判断を示したのです。「特段の事情」とは何でしょう。これでは間男が自由に浮気できることになりませんか。
【回答】
ご指摘の最高裁判決は、甲と不貞行為をした乙には、甲の配偶者丙に対する慰謝料支払い義務がない、と判断したのではありません。
問題は、この件の事実経過と丙の慰謝料請求の理屈です。甲と丙は平成6年に婚姻、甲が就職した20年から夫婦間の性交渉がなくなりました。甲は21年から乙と不貞を始め、22年に丙にバレて、不貞関係は解消。しかし、甲は26年に別居し、丙の申し立てにより、27年に離婚調停が成立しました。その後、丙は乙に対して慰謝料請求の裁判を提起したという流れです。
丙が慰謝料裁判を提起したのは平成27年以後、不貞を知ってから3年が経過しています。かねてより最高裁は、不貞行為が婚姻共同生活の平和の維持という権利、又は法的保護に値する利益を侵害する行為であり、不貞配偶者の他方配偶者に対する不法行為になるとの見解です。