5月1日をもって新天皇に即位される、皇太子徳仁親王殿下。そのお人柄は温厚で周囲の人々に対する気遣いもある、とても高潔な人格者だと言われている。そんな皇太子殿下は天皇陛下からどんな教えを受けてきたのか。『天皇陛下のプロポーズ』(小学館)の著者であり、陛下の70年来の友人でもある織田和雄さん(83)に聞いた。
「皇太子殿下がお生まれになった翌年、陛下からいただいたお正月のグリーティングカードに、ご長男誕生を喜ぶお気持ちがしたためられていました。陛下にも普通の父親としての一面があるのだなと思いました」
それは昭和36年のお正月のこと。生後10か月ぐらいの殿下と両陛下の微笑ましい写真が貼られたグリーティングカードが、織田さんのもとに届いた。そこには、殿下の成長ぶりと独楽(コマ)を回して一緒に遊ぶご様子が、陛下の自筆でしたためられていたという。
陛下が書かれた文面には、赤ちゃんの頃の皇太子殿下は、独楽を回すと大変喜び、陛下ご自身も子供の頃に独楽が大好きだったことを思い出したことが綴られていた。そして自分で回せるようになったら陛下と競争するようになるかもしれず、そうなったらどちらの遊びなのか分からなくなってしまうのでは……と、ユーモアの中にわが子への深い愛情をうかがわせる内容が書かれていた。その文面を読みながら織田さんはこう話した。
「陛下が幼いわが子と独楽で遊んだという、愛情にあふれるステキな話だと感じました。グリーティングカードの最後には、美智子さまもお年賀のメッセージを一筆添えていらっしゃり、ご夫婦で心を一つにして、皇太子殿下をお手元で子育てされている様子が伝わってきます」
陛下が生まれ育ったころは、皇室のお子様方は幼くして親元から離され、養育を担当する傅育官(ふいくかん)と乳人(めのと)によって育てられていた。従って父君の昭和天皇が一緒に遊んでくれるということは、ほとんどなかったと言われており、当然ながら親子で一緒に独楽を回すこともできなかったであろう。