実際にはない効能があると“捏造”した高血圧薬「ディオバン」事件(*注)発覚から6年余り。その背後には、製薬会社から医師への「便宜供与」があった。こうした“不適切な関係”は、この国のあちこちの病院に存在しているという。現役内科医が衝撃の実態を明かす──。
【*注/製薬会社・ノバルティスファーマが複数の大学の研究室に総額約11億円の奨学寄附金を投じる一方、これらの大学が行なった臨床研究のデータが降圧剤「ディオバン」に有利になるよう改竄されていたことが明らかになり、同社と元社員が薬事法違反に問われた事件】
ある日の夕方。大学病院の会議室で製薬会社主催の「新薬説明会」が始まろうとしていた。勤務を終えた医師がやって来ては、用意された弁当を受け取り席に着く。やがて始まった新薬のプレゼンを、医師たちは弁当をつつきながら眺めている。製薬会社が用意したのは一人前3000円の高級仕出し弁当だった──。
こうした「弁当付き新薬説明会」は、日本の病院ではありふれた光景だという。
「新薬説明会は製薬会社の宣伝活動の一環です。『弁当につられる医者なんているのか』と思うかもしれませんが、“医者が食事接待によって処方薬選びの判断を変える”ということを確かめた実証研究があります」
そう指摘するのは、新著『知ってはいけない薬のカラクリ』(小学館新書)を上梓した現役内科医・谷本哲也氏だ。
◆どの薬を飲ませるかは医者次第