IT界の巨人・グーグルと、孫正義会長(61)率いるソフトバンクグループには時価総額にして67兆円の開きがあるが、孫氏はその背中をはっきりと視界に捉えている。
3月21日以降、ユーザーから“苦情”が相次いだグーグルマップの不具合問題は国内地図大手・ゼンリンとの契約変更が原因とされるが、グーグルがゼンリンから離れた裏で、孫氏らが設立したソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資するベンチャー企業「マップボックス」がゼンリンと提携していた。
孫氏は「地図データ」、その先の「自動運転」という巨大市場でグーグル超えを果たそうとしているのだ。孫氏とグーグルの「因縁」は、およそ20年前まで遡る。
1990年代にIT界の寵児として颯爽と登場した孫氏だが、2001年にネットバブルが崩壊すると、最高値で20万円をつけたソフトバンクの株価は100分の1まで下落した。
元ソフトバンク社長室長で、孫氏の側近だった多摩大学客員教授の嶋聡氏は、「当時、孫さんはグーグルへの出資を検討していた経緯があります」と明かす。
「孫さんは、ネットバブル崩壊直後に『ネット企業への投資の最大のチャンス』と考えて、グーグルやアマゾン、中国の百度への出資を本気で考えていました。しかし、当時はブロードバンド事業(ヤフーBB)の展開を優先したため財務的に投資できる状況になく、その後のグーグルの覇権拡大を指をくわえて見ているしかなかった。孫さんは『ヤフーBBをやってなかったらグーグルを買っていた』と何度もこぼしています」(嶋氏)