東京・福生病院で腎臓病患者の女性(44)が人工透析中止を選び、意思確認書に署名した1週間後に死亡した。今年3月、そのことが報じられると、病院が〈死への誘導〉をしたと批判され、意思確認や手続きが適切だったのかが問題視された。
延命治療を続けるのか、やめるのかという判断は非常に難しい。厚労省の「人生の最終段階における医療に関する意識調査」(平成29年度)によると、末期がん治療での「経鼻栄養」は望むが9.8%、望まないが64.0%、「胃ろう」は望むが6.0%、望まないが71.2%、「人工呼吸器」は望むが8.1%、望まないが65.2%と、望まない人の方が圧倒的に多い。
回復する見込みはもうない。それでも一日でも長く生きるために、苦しい治療を続けるか否か。
物議を呼んでいる「透析中止死亡」の問題が投げかけたのは、「延命治療をやめる」という選択の難しさだった。いつ、どのようにすれば、親や自分が後悔しない死に方を選ぶことができるのか。
我々は、延命治療を「断わる」ための手続きを知っておく必要がある。近年、医療現場で推奨されるのは、終末期の医療や介護の方針について、本人が家族や医師などと事前に話し合っておくことだ。
このプロセスは「アドバンス・ケア・プランニング」(ACP)と呼ばれる。厚労省はじめ、日本病院協会や日本医師会などは、ACPチェックシートに自分の意思を書き込むことを奨励している。重い病気にかかったり、意思表示ができなくなる前に取り掛かることが望ましい。