朝ドラは長丁場だが、やはり最初は肝心だ。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。
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いよいよNHK連続テレビ小説『なつぞら』がスタートしました。100作目にあたる朝ドラ、その世界観はいかに? 物語の滑り出しを見る限り、前作がクリアできなかった課題を軽々と超えそうな気配。その理由を3つ挙げてみると──。
【1】スタート時点で際立つ「俯瞰力」
第1話、第2話の冒頭に象徴的だったのが、主人公・奥原なつを演じる広瀬すずの登場の仕方でした。草原、日高山脈、牧場を見下ろす丘。少女はキャンバスに絵を描いている。この少女が成長していずれアニメーターになる、ということが短い時間の中で示されました。つまり、「誰の」「いかなる物語か」という全体像を、しっかりとピン止めしたわけです。
しかも第1話、第2話、二度にわたって広瀬すずが登場し全体を俯瞰し、物語の核心を予感させるという独特なパターンが繰り返されました。
そして時を遡り、幼少期のなつの物語へ。東京大空襲で焼け出され戦災孤児となったなつは、北海道・十勝の酪農家・柴田家へと一人引き取られる……。
これまでの朝ドラにも冒頭の一週間程、子役が出てきて主人公の幼少期を演じるパターンはありました。しかし、深く考えることなく幼少期から始まり順繰りに時を追っていくスタイルと、今回の構成とは明らかに違います。
成長した主人公がまず全体を見渡す。そこを起点とした時間軸がわかり場面が移動していく。しっかりとした「構成図」「設計図」があるからこそ、こうした俯瞰ができる。だから今後半年間という長丁場も、ちょっとした思いつきのように恋愛エピソードを挿入したり、同じエピソードをずるずる使い回す、といったことにはならないはずです。
特に今回は、稀代の名作朝ドラ『てるてる家族』を書いた大森寿美男さんが脚本を担当するだけに、時代を投影し生活をいきいきと描き出し、しかも物語を大胆に展開していく力に期待がふくらみます。