ここ数年の中学受験といえば、新時代に向けた教育内容を強調する共学校が人気で、特にキリスト教系の女子校はおしなべて苦戦を強いられていたという。それが2019年度入試では一転して前年より受験者を増やした学校が多かった。そこで、安田教育研究所の安田理氏が、この2年間の入試状況とキリスト教系の学校人気が好転した理由を探った。
* * *
3月21日、「キリスト教学校合同フェア」が青山学院高等部を会場に開かれたのだが、前年を2割も上回る5000人もの来場者があった。
ちょうど昨年の今ごろ、私は入試状況を分析していて、個人的には「困った世相になったな」と残念な気持ちでいた。というのは、首都圏では中学受験の受験者が3年連続して増えているにもかかわらず、カトリック校の苦戦が著しかったからである。
東京にはカトリックの女子校は8校あるが、うち大半の6校が前年より受験者を減らしていた(増えていたのは光塩女子学院と聖ドミニコ学園のみで、それもそれぞれ31名、5名とごくわずか)。
神奈川にも同じく8校あるが、やはり増えていたのは3校しかなかった。増えているといっても、カリタス女子が62名増えている以外は、函嶺白百合学園が14名増、聖セシリア女子が3名増とやはりごくわずかだった。
カトリック校は、「徳においては純真に、義務においては堅実に」(雙葉、横浜雙葉)、「従順、愛徳、勤勉」(白百合学園)、「ノーブレスオブリージュ(能力は自分に与えられたのではなく世の人々のために使うよう与えられたもの。努力して能力を人々のために)」(晃華学園)といった校訓を掲げていて、それがいまどきの保護者には受け入れられないのだなと心配してしまったである。
ちなみに2018年度のプロテスタント校は、東京で10校のうち5校が増、神奈川で6校のうち3校が増であった。ちょうど半数が増であったが、受験者総数が増えているのに半数は増えていないのだから決して喜ばしいものではなかった。
それでもプロテスタント校のほうがまだマシなのは、カトリック校が閉鎖的で硬いイメージであるのに対し、プロテスタント校は明るく開放的な校風で、生徒が元気な学校が多いことが、この差を生んでいるのではないかと解釈したものである。