もしも愛猫ががんになったら? 中でも最近注目されつつある、抗がん剤治療についてレポート。人間同様、治療の選択肢は広がっているようだ。
抗がん剤治療とは、内服や注射によって、がん細胞の増殖を抑える治療のこと。外科治療(手術)や放射線治療ががんに対して局所的な治療であるのに対し、抗がん剤治療は広範囲のがんにアプローチが期待できると、日本動物高度医療センター東京の院長・山下傑夫さんは言う。
「動物への抗がん剤治療の効果は、ヒトに比べて立証されている疾患が多くないのが現状です。そうした中で、リンパ腫や白血病など、全身に発生する腫瘍の治療には適しているといわれています。その他、リンパ節や他臓器に転移した腫瘍、手術で取り切れない腫瘍などに対しても抗がん剤が使われています」(山下さん・以下同)
抗がん剤治療の目的は、主に次の3つがある。
【1】治癒、または寛解(がんが検査上なくなり、生活に支障のない状態)を目指す場合
【2】切除不能、再発がんといった治せないがんに対して、進行を遅らせてがんとの共存(延命)を目指す場合
【3】がんに伴う症状を緩和して、生活の質の改善をはかる場合
ペットに対する抗がん剤治療は、できるだけ入院せずに、通院治療で生活の質を維持することも重視される。そのため、人間に出るようなひどい吐き気や脱毛といった重い副作用が出ないように薬を投与することが多く、副作用がつらくて治療が続けられないといったケースは少ないという。
「とはいえ、抗がん剤投与から2~3日程度は軽い吐き気や食欲が落ちるといった消化器系の症状が出ます。7日目前後では血液中の白血球や血小板の数が減少する場合も。さらに、継続的な投与によって毛質が変わったり、ひげが抜けたりすることもあります。予想される副作用については、事前に主治医から充分な説明を受けるようにしましょう」
抗がん剤の投与の頻度は、週に1回や3週間に1回のもの、毎日服用するのみ薬などさまざま。さらに治療効果の有無や、効果がある場合はその効果が維持されているかを定期的に検査する必要もある。
そのため使用する薬剤、頻度、期間などに応じて費用も異なる。目安としては、総額で数万円から、場合によっては50万円を超えることもある。
「抗がん剤治療を開始するにあたっては、きちんとした診断のもと、治癒(寛解)を目指すのか、がんの進行を遅らせて生活の質を維持するのか、目的をはっきりさせることが大切です。その上で、期待した治療効果が得られなかったり、生活の質が損なわれてしまう時には、主治医と相談して“やめ時”を判断することも大事です」
治療方法や治療方針を決めるのは飼い主だ。愛猫の体調や経済的負担を考慮しながら、その時々のベストな選択を主治医と共に見つけていこう。
※女性セブン2019年4月18日号